魂萌え!
59歳の平凡な専業主婦・敏子。ある日夫が突然死し、しかも真面目なだけが取り得だと思っていた夫に10年も付き合っていた愛人がいたことが発覚・・・
桐野夏生の作品に出てくる女は、「OUT!」の雅子とか、「ファイアボールブルース」の火渡みたいに、クールで突き抜けたカッコよさを放ってる女が多いんだけど、この敏子はとてもおっとりしていて世間知らずのフツーの「奥様」。夫の庇護の下で何の苦労もなく過ごしてきたよな、そんな平凡なキャラに、想像を超えた「現実」をつきつけ、さらには独りで“老い”に立ち向かわせる作者・・・残虐だったりグロテスクだったりするおなじみの桐野作品とはひと味違うコワさが潜んでいる。題名の「魂萌え!」というのは、カラダは老いていっても魂はなお萌えさかる、ってな意味らしい。うーん・・・この派手なピンクの花柄をあしらった表紙がまた・・・。
怠惰な青春を他人事のように見送り、修羅場な朱夏を世知辛くも切り抜け、さぁてボチボチ心穏やかに過ごせる白秋が訪れてくれるんだろうかと思っていた私だが、朱な季節はまだまだ終わらないのかもしれない。残り少ないからこそ「とことん行きなさい」なのかな。加齢と言うのは奥が深そうだ。
ところで桐野夏生さんは、偶然だが私と誕生日が10年と1日違いの10月7日で、本名は「まり子」なんだそうだ。
「魂萌え!」
桐野夏生 著
2005年4月25日 初版
毎日新聞社 刊
なお、この作品は現在映画化が進行中で、「亡国のイージス」でヒットを飛ばした阪本順治さんが監督。来春公開だそうで、ヒロイン敏子には風吹ジュン、急死するダンナは寺尾聰、その愛人には三田佳子。うーん、対決シーンがコワそうだ・・・
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