ローマ人への20の質問
イタリア通で知られる塩野七生さんが、1992年から執筆を続けている古代ローマを描いた壮大な物語「ローマ人の物語」シリーズ(現在28巻?)の、サイドメモのような本。
実は肝心の「物語」の方は読んでいないのだが、単体で読んでも充分に読み応えのある一冊だった。知的でクールな文体。高村薫さんもそうだが、この人の文章は完全にアンドロジナス。
周辺の国へ攻め入ってどんどん支配エリアを拡大していったローマ帝国だけれど、敗戦国の民を弾圧したり排除したりはしなかったらしい。むしろ融合?するような扱い方であったとか。
特に、優れた文化を持っていたギリシャに対してはその文化を積極的に学ぼうとし、自国の言語を強要するのではなく自らがバイリンガルとなってギリシャ語を学んだそうだ。
しかも、子弟の家庭教師にはギリシャの知識人を招いたという。また、当時の常として奴隷制度は存在したが、階級間は比較的流動的であり、解放奴隷出身の指導者層も少なくなかったという。
人種的偏見を持たない開放性、敵国であってもよきものは素直に取り入れる合理性。
また、“悪”というものの存在に対しても、「諸悪の根絶」ではなく、悪との節度ある共存を選んだバランス感覚は卓越していて、“オトナだなぁ”と思う。「国際関係論」なんて大きな話じゃなくて、個人的な人間関係にてらしてもさまざまな教訓を含んだ一冊だった。
・・と言いつつ、なかなか自分自身は“オトナ気ない”まま成長しない。この本を読んで、「苦手なヒトとか嫌いなタイプのヒトにこそ学ぶくらいの姿勢を持てないものか?」と思ったけど、ナカナカね。とりあえずイラつくからってイジメに走るのだけはやめよう・・と密かに決意したりなんかする、なんだか小学生レベルの私であった。情けなや・・
ローマ人への20の質問
2000年1月 文春新書 刊
塩野七生 著
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コメント
お初です。
判りやすくて良い本ですよね。
こんな本が世に溢れていると便利なのですが。
投稿: ojiyan | 2006年9月19日 (火) 22:14