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ニライカナイの空で

父の事業の失敗によって東京からはるばる九州まで一人で旅してきた12歳の“山の手のおぼっちゃん”新一。小倉駅まで迎えに来てくれた父の戦友・野上源一郎は、なんとも粗野で高圧的な男。萎縮する新一に弁当をすすめてくれたが・・・Photo_34

男の優しげな声がかえって薄気味悪かった。これまでのことを考えると、なおさら不気味な気がした。遠慮するなと言うのは遠慮しろということの裏返しかもしれない。本当は腹がぺこぺこだったが、まずは様子を見るためにやんわりと断った。
「きさん、もういっぺん言ってみろ」
男の顔つきが一変した。見る間にこめかみに青筋がたつ。

「きさんはそれでも子どもか。子どもが腹へらんことがあるか。飯食わんようやったら、子どもなんかやめてしまえ」

すごい理屈だが、この人はこの人なりに筋が通っているのである。男は男らしく、という時代で、まして九州男児。ちょっと困ったオヤジではあるが、ちゃんと子どもと向き合う、ある意味で“正しい大人”・・・。
この強烈なキャラとの出会いを皮切りに、さびれかけた炭鉱町で、プリミティブでパワフルな“正しいガキども”に囲まれていろんな体験をする新一。夏休みには親友“竹ちゃん”と自作のヨット「ニライカナイ」号で無人島目指して旅に出る・・・。
次々と心躍る経験に出会う主人公の成長譚はわくわくと楽しく、久々に心地よい気分で小説を楽しんだ。ちなみに、「ニライカナイ」とは沖縄の方言で、海の彼方という意味だとか。

小学生の頃、ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』が大好きで、何十回も暗記するほど読み返していたが、やっぱり“少年”には冒険が似合う。イマドキの子どもたち、ちゃんと冒険してるかな?

  ニライカナイの空で
   上野哲也 著
   2000年6月 講談社 刊
   第16回坪田譲治文学賞 受賞作


   それにしても、この安直な表紙はいかがなものか・・・

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