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イワナに会いたい!

生態学、人類学者の泰斗であり、日本における霊長類研究の創始者として知られる今西錦司氏。登山界でもいろいろな足跡を残すマルチタレント?のような人だが、魚釣りにものめりこみ、特に山深い渓流での釣りを好んだという。
Photo_107魚に関しては“釣り人であり学問的には素人”という立場でいろいろな文章を残している。根が学者なので、種の分類系の論稿となると目が活字の上を滑っていってしまうが、軽いタッチの随筆などは昔の知識人というのはこういうものか、と興味をそそられる。
元々この本は、1986年に(財)淡水魚保護協会が刊行した『うろくず集』がベースになっている。あまり売れなかったそうだが、その理由は価格の高さもさることながら、タイトルがよくなかったからだと言う。書名を巡って出版社とモメて、ついには今西氏が「この題名が気に入らないなら出版しなくてよい!」とキレたそうである。“うろくず”とは“鱗くず”のことだそうだが、面白いこだわりだ・・・
その『うろくず集』に四編のコラムを足して装い新たに発行されたのがこの本。(とは言え10年前の話だ)
国内各地での調査釣行はもとより、カラコルムや中国奥地での釣りのエピソードなど、門外漢が読んでも面白い。今西氏はマス・サケ科の渓流魚に執着しているが、ヤマメやイワナの美しさを見ているとその気持ちがわかるような気がする。口絵のグラビアに、日本各地および、台湾、中国、ネパールのマス・サケ科の魚が紹介されているが、なんたって日本のヤマメとイワナが群を抜いて美しい。特に、イワナの野武士を思わせるような風貌ときたら・・・こんなやつに会いに行ってみたい・・と思った。上の廊下を遡行した時に、深い淵底をゆったりと泳いでいた尺イワナに目を見張ったことはあるんだけど・・・

 『イワナとヤマメ 渓魚の生態と釣り』(平凡社ライブラリー)
  今西錦司 著
  平凡社 1996年 刊

この本の中の随筆から、お気に入りの一節を。

 家までかえったら、もう釣りの一日は終わった、とお考えになるであろう。ところでわたくしの場合は、なかなかどうして、これからがかなり重要なのである。まず風呂である。子供たちがさきにはいって、湯をにごしたりへらしたりしていない風呂にはいる。あがると、おかんの湯がわいているので、一本つける--今日のためにとっておきの配給酒だ。魚はまだ出てこない。このとき、このわたでもからすみでも--おっとそんなぜいたくはいわない--なんでもよろしいから前菜がほしい。それを肴にして、一杯また一杯と独酌をかさねる。食卓には今日とってきた山の花が、なんという花だかよくは知らぬが、かざってある。
 そのうちに釣った魚が出てくる。大きなのは塩焼きになり、ちいさなのは天ぷらになって。またぶつ切りにして、山のみょうがといっしょに、味噌汁のなかみとなったものもある。それらが前にならぶのをみて、また一杯。家内が出てきて、せっかく料理したものを、あついうちにあがってください、という。いや一匹食ってみたが、なかなかうまくできている、といいながら、やっぱり前にならんだ魚をみて、うれしそうにまた一杯・・・。 
  『釣りの一日』一九四六 より

イワナについては、以前Rデンスのクライマー、Sさんにお借りした 『イワナの夏』を読んだが、やはり編集者と学者、また時代の違い・・などから、同じ魚に関してでも切り口が異なっていて面白いと思った。また、今西さんの本を読んでいて、“ネオテニー”ということについて自分なりにつらつらと思うところを書いてみたいと思った。これはまた後日・・・アマゴはサクラマス、イワナはアメマスとDNAレベルでは同じ・・・うーん・・・?

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