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ヤマケイ・テクニカルブック③『雪山登山』

ベーシックな入門書だが、昨秋に出たばかりなので目新しい情報がないかざくっと目を通してみた。(スミマセン、この項、超長いです。極にゃみ的に概要をマトメたので。)
Photo_114〈装備について〉
■靴の比較
靴は、レザーがメインで扱われ、サブ的にプラスチックと化学繊維タイプが紹介されている。それぞれの特徴の説明は・・・

・レザー
雪山を代表する登山靴。現在では保温性に優れた中綿素材が入っていたり、透湿防水素材を加えたものも出てきて格段にグレードアップしている。アッパーに適度な柔軟性があり歩きやすく、通気性もあるのでむれにくい。保温性、防水性はプラに劣る。

・プラスチック
完全防水で保温力が高く、メンテナンスフリー。重さと堅さに難点があったが、最近のモデルは軽くて柔軟性のあるものが出てきて、再びその機能が見直されるかもしれない。

・化学繊維(カーボンやケブラー)
レザーよりさらに軽量。透湿防水素材がライニングされて防水性も高く、保温のための中綿も入っている。レザーより保温性は劣るが軽量なのでスピード化を求める山行やアイスクライミングには適している。

■わかんとスノーシュー
急斜面のあるコースや、予備的に持っていくにはコンパクトで軽いわかん、林道や緩い斜面、平坦な雪原歩きなどにはスノーシュー。

■ウエア
アウターには近頃話題のソフトシェルが紹介されている。柔らかく動きやすいのでアイスクライミングなどにはおすすめだが湿った雪や雨の時には使えない、としている。

■雪崩対策ツール
「ゾンデ」ではなく「プローブ」と表記。最近は「ゾンディーレン」ではなくて「プロービング」って言うようになってきてるので、この用語もそろそろ定着してきたかも。ビーコンはトラッカーDTSの写真が。

〈食糧について〉
肉味噌を使ったラーメンとか、FDスープを使った雑炊など私の基本メニューと似たものがいろいろ・・・。ペミカンの作り方も紹介されている。

〈テント〉
軽量化を目指すならゴアテックスの本体のみで、と。や、やっぱり・・・ベーシックドームのゴア単体、寒かったんですけど。正月に280gの夏用シュラフで行くヤツが悪い?そうですね。

〈行動技術について〉
■滑落停止
通常の“肩制動”のほかに“腰制動”というのが紹介されている。半身になって、腰の位置でピックを叩き込む方法。恐怖感がなくて初心者でもやりやすい、とコメントされている。ほかに、頭が下で仰向けで転倒した場合先ずピックを雪面に刺して、それを支点に身体を回転させるっていう“背面制動”が紹介されているんだけど、できるかなぁ、これ・・・。今までは仰向けの態勢でピックを構えて、うつぶせに回転する力で叩き込む、ってやり方を練習してたけど・・。今度どっかでやってみなきゃ。

■スタンディングアックスビレイ
埋め込むアックスの向きは「斜面に対してアックスのヘッドが縦になる」
「両足でブレードやピック部分に乗ってアックスが抜けないように確保する」
「傾斜がきつい場合は片足を上げて確保するが、荷重をアックス側の足にかけておけば抜ける心配はない」とある」としている。
ロープディレクション用にアックスにセットするビナはロッキングタイプ、スリングは10cmくらいのものをアックスのシャフトにタイオフ。・・同じSABでも微妙にイロイロだなぁ。

■コンテニュアス
手に持っているループにアックスのシャフトを刺し、ループが締まりつつ制動になるっていう「東京コンテ」(←初めて聞いた)
OM方式は「大阪コンテ」として紹介されているけれど、私が教わったのとは微妙に違うかも。ほかにタイトロープが「ガイドコンテ」として紹介されている。

■搬送法
空ザックの外側にストックを通し、要救の足をかけて背負う方法、レインウエアとザックで背負子を作る方法などがイラスト入りで紹介されている。このあたりの技術が一般書で紹介されるのは初めてでは?

総合的にわかりやすくて、入門書としてはいい本だと思う。雪洞内の写真に一升瓶が写っているところなんか、好きカモ・・
ただ、ロープの連結について、エイトノットを紹介しているのはいかがなものか・・・ご丁寧に「懸垂下降のロープの結び方は、昔はダブルフィッシャーマン結びだった。しかし、今ではダブル8の字結びのほうがほどきやすく、構造上、岩角にひっかかりにくいので採用されるようになった」とコメントがある。「ただし、この結び方こそ、強く引っ張って固い結び目をつくるようにしたい。末端の長さは20cm以上必要である」と但し書きをつけてはいるけど・・・どうなんだろう。

  ヤマケイ・テクニカルブック 登山技術全書③ 雪山登山
       遠藤晴行 著        山と渓谷社 刊
        2006年11月15日 初版1刷発行

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