『山岳遭難の構図』(再掲)極にゃみ的読①
先日出版されたことを軽く紹介した標題の文献について・・・
この本は2つのパートで構成されており、最初の章は、山岳遭難事例の分析。
統計データから読み取れる要素を研究者ならではの視点から明確にし、事故発生のメカニズムや事故要因の分析などについて書かれている。
山岳遭難に関して、これまでは専門的な研究はほとんどされておらず、漠然とした“経験論”だけで語られていた。つまり、「最近の登山事故の傾向は・・」と言った話は、自分の経験の中だけの内容であったり、伝聞したことを検証もなく一般論として語ってしまうといった状況。「遭難が多発するのは未組織登山者の無謀な・・」などと言ったことがまことしやかに語られているが、実際には“未組織登山者の実態”など誰も把握していないのである。
このような現状を踏まえた上で、収集したデータをプロの研究者として著者が分析した結果は・・・
年齢、性別、基礎体力、事故発生時の天候、事故現場の立地的特徴、季節、時間帯・・など多岐に渡った分析は非常に興味深い。読んで損はない一冊だと思う。
ひとつだけ重要な内容をピックアップすると、突出して事故が多発する“魔の時間帯”が存在し、それは、全体の3/4行程だそうである。ぜひとも意識しておきたいことである。
『山岳遭難の構図 -すべての事故には理由がある』
青山千彰 著 東京新聞出版局 刊
2007年1月23日 初版発行
続きはまた。
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