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『山岳遭難の構図』極にゃみ的読②

前回分の続き、第2部は“道迷いと遭難の関連性について”
Sangaku_sonan3山岳遭難事故の“態様”は、近年の統計データによると転滑落が約3割、道迷いが約3割、転倒が約1割、病気や疲労が約1割。
しかし、転滑落のきっかけはルートファインディングのミスかもしれないし、疲労の原因は道迷いかもしれない。データとして表れなくても、潜在的に道迷いが事故の原因となっている可能性はかなり高いと見られる。
そこで、著者は実際の山中で定位能力をチェックするなど道迷いに関する実験を行い、「なぜ迷うのか」「どのように迷っていくのか」などを研究し明らかにしてきた。(これらの実験に被験者として参加したが、“青山ゼミの七不思議”と言われる?奇妙なサンプルとなった)
その結果わかったことは・・

人は道に迷ったとき、非常に特徴的な傾向を示す。それは、“わずかな地形情報を充分な判断なしで強引に取り込もうとする”。
つまり、地形図と現場の地形を強引に照合してしまう、ということらしい。うーん・・思い当たる・・・(←道迷いの達人)。

さて、それでは道に迷ったときにどうすればいいのか。
①「迷ったら引き返す」が鉄則と言われているが、迷ったと気づいたときにすぐに引き返すのではなく、5分ほどそこにとどまって、歩いてきたルートの特徴を思い出し、どこまで戻るのかをイメージしてから動くことが大切だとか。歩いてきた道をやみくもに引き返しても、来た道を正確に認識できない人が多く、戻りながらさらに迷うことになりかねない。

②藪には入らない。方向感覚が失われがちな上、よけいなパワーを使う。ショートカットできそう、と思っても道があるなら道を行くほうが結果的によい場合が多い。

③「迷ったら沢に下ってはいけない」と言われるが、海外の文献では川に沿って下ればいずれ人里に出る、と書かれているものもあり、ケースバイケースでの判断が必要。
日山協遭対常任委員会では「周辺地形を見ながら、状況に応じて移動を開始する。この際、上、下いずれの方向が安全であるか指導することは難しい。ただし、谷筋上を移動すれば上、下、いずれかで滝にぶつかる危険性があることを考慮に入れておくべきである」としている。

ところで、迷ったらどうするか、よりも迷わないためにどうするか、の方が当然ながらより重要である。この問題に関して著者は“PLP法”という方法を提唱している。講習会や引率登山の場合などにも応用できそうな方法だと思う。
これについてはまた・・

  『山岳遭難の構図 -すべての事故には理由がある』
    青山千彰 著  東京新聞出版局 刊
    2007年1月23日 初版発行

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