『緑回復の処方箋』
先月、宮脇昭氏を描いた「魂の森を行け」を読んで、ぜひ本人の著書を読んでみたいと思って探してみた本。 15年以上も前に書かれたものだが、いまなお、いや、いまさらに、重要性が高まっている提言がたくさん盛り込まれた書である。
著者は植物生態学者であるが、見た目が美しいだけの“ニセモノの緑化”ではなく、その土地本来の潜在的な植生を回復させる、というポリシーの元に多くの偉大な仕事をなしとげてきた行動力の人だ。
「本書は私が今まで約四十年間足で調べてきた緑の現状から、生態系の主役、緑の生命集団と人類が共生して未来に向かって生き延びるための基本戦略の1つとして、自然環境の保全と供に、荒廃が進んでいるところでは、いかに積極的に生きている緑の構築材料を使いきって修復・回復・創造するかの願いをこめてまとめたつもりである。」
地道なフィールドワークを根気よく続けてきた“現場の人”である著者の視点はとても大切なことを見極めているように思える。
「一見自由に、ぐうぜんの所産の結果として勝手に生えているように見える森や草原の、あるいは庭の芝生の雑草すら、彼らは生まれる前からきびしい環境規制に耐えてやっと芽を出す。」
植物社会も、競争・共存・我慢によるすみ分けがあって、社会的な(植物社会の)さまざまな規制に耐えて生き延びているそうである。そして、ややきびしい、やや我慢を強いられるような条件化で生育している植物ほど強いそうである。なるほど・・・
『緑回復の処方箋 -世界の植生からみた日本』
朝日選書427
宮脇 昭 著
朝日新聞社 刊 1991年6月初版第1刷 発行
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