『あてのない絵はがき』
画家で詩人でエッセイスト、岩魚釣りの名手でフランススキーの達人・・?おそるべきマルチタレントである辻まことさんの作品を柴野邦彦氏が編纂、その独自の作品世界を多彩に楽しめる一冊。
選者あとがきの中で、辻まことさんが語った空海に関するエピソードが紹介されている。
『弘法大師というのはその時代きってのエリートで、西域まで行ってお経を修めたというんだから、今で言えばオックスフォードとソルボンヌを卒業したような、超アカデミックな人なんだよ。アカデミシャンというのはたいてい論理で人を説きふせようとするんだが、この人は違ってたんだ。四国の八十八ヶ所に推選登山コースを作ってね、極楽へ行きたければこの山に登りなさいって言ったんだ。みんな白装束にワラジばきで山へ出掛けるわけだけど、今と違って夜は暗かっただろうし、オオカミも出ただろう。そういうところではね、人間は貧富の差も、学歴も年齢も関係なく、一個の生き物として試練に立ち向かわなくちゃならない。そして、それを続けているうちに、そうしたものに打つ勝つ力が自分の中に沸いてくるのを感じるし、またそうした中で自分が毛物(ママ)のように死ぬ事にも疑問を抱かなくなるんだよ。つまり極楽に行く前に極楽に居るような状態になっちゃうんだ。空海という人はそういう事を知っていたんだね』
・・・ケモノのように死ぬことにも疑問を抱かなくなる・・それが極楽に居るような状態・・。そうなんだ・・うーん。深い。
←極にゃみ的お気に入り・・
“銭湯みなと湯”の壁画だそうである。
『あてのない絵はがき』
辻まこと 著
小学館 発行
1995年 初版
■辻まこと(本名辻一:つじまこと)
1913年9月20日生まれ、1975年12月19日死去。
あの伊藤野枝さんの息子さんだそうである。
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