『車窓の山旅 中央線から見える山』
車窓から後に去りゆく景色を楽しむ旅のことを「逆旅」というそうだ。 著者の山村氏は山梨県に生まれ育ち、“タダで汽車に乗れる”という理由で国鉄(当時)に入社、中央線(中央本線)の車掌として39年間を過ごしてこられた。中央線沿線の風光を逆旅として見ながら、4000回にも及ぶ乗務と趣味の登山で沿線の山や車窓からの景色に精通。見える山々を緻密に同定し、登り、調べ、130枚の珠玉の写真とともに、山名の由来や歴史などさまざまなエピソードを交えて綴った一冊はまさに“この人でなければ成しえなかった”偉業だ。
新宿から見える富士山を皮切りに、松本駅から見える山々まで順を追ってまとめてあり、ページをめくりながら旅をしているような心地になれるステキな作品。いつかのんびりと、各駅停車で中央線を旅してみたい気持ちになった。
極にゃみ的には、最近はどの本も興味のある部分以外は読み飛ばすような雑な読み方をすることが多いのだが、この本は1ページ1ページ、大切に時間をかけて読んだ。
新宿駅から見える富士山について書かれた第一章は、
「登るも山、眺めるも山。山恋いの日々、これまた好日。」と結ばれている。
“初鹿野”などの美しい地名も残っており、このような部分については後日また取り上げたいと思う。
『車窓の山旅 中央線から見える山』
山村正光 著
実業之日本社 刊
1985年2月 初版第一刷発行
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