『感謝されない医者―ある凍傷Dr.のモノローグ 』
「凍傷と言えば金田先生」というのは、山の世界ではかなり知られている。
加藤保男、吉野寛、山野井泰史・妙子夫妻など著名なクライマーをはじめ、30年間に800例以上の凍傷患者を治療してきた実績を持つ医師。重傷の症例では手足を切断しなければならないことも多いが、「切断術が嫌で嫌で、どうしようもなく嫌でたまらない。」そうである。
「手術した患者から感謝されたことはきわめて少ない。それはそうだろう。指を切り落とされて「ありがとうございました」でもないからだ。」
それでも、冬に限らず世界中の高峰で凍傷を負った山ヤがひっきりなしに治療を求めてやってくる。そんな数多くの治療例や、思い出深い患者のエピソードなどが綴られている。一般的にはあまり知られていない凍傷という病態についての解説や、凍傷になるメカニズム、予防法なども興味深いが、“切断”という章で語られる、アフガニスタンの野戦病院での体験もまた強烈な印象を残す。
壮絶な医療現場で長年戦ってきた医師であり、山を愛する登山家である著者にしか書けない貴重な文献である。
※凍傷の病態に関する記載については別コラムで・・
この先生について、登山家の竹内洋岳さんが面白いエピソードを紹介している。
文登研の研修会で医療の講義をしていたとき、参加者の一人が、
「山の中でこんなこんなでけがをしたら、どうしたらいいですか?」と質問。
それに対して先生、
「あ、山でそんな怪我するような人は、山をやる資格はありませんから、助けなくていいです。以上。」とお答えになったとか。 きゃぁぁ~・・・ w (≧∀≦) w
★竹内洋岳さんのサイト
http://weblog.hochi.co.jp/takeuchi/2007/09/post_3013.html#more
『感謝されない医者―ある凍傷Dr.のモノローグ 』
金田 正樹 著
山と溪谷社 刊
2007.3.1 発行
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