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『乳の海』

プロローグ「機械じかけの聖母」から終章「解題」までの12章で“母性管理”=“乳の海”で溺れ、壊れていく青年をからめながら綴られていく時代評論? 
Photo新宿西口バス放火事件、イエスの方舟、金属バット事件、パリ人肉事件、逆噴射事件、etc.
70年代の終わりから80年代の初頭にかけて頻発したこれらの不可解な事件について
「つまり、八十年代の初頭、情報化社会という新たなる柔らかく、より強靭な母性的な超管理システムの到来によって、その貪欲な電子の子宮に飲み込まれ封印されはじめるであろう肉質の予感が、そのとき叛乱したのだ。」と書かれている。

極にゃみ的には、母性的管理・・とか情報化社会・・というより、野性を捨て、自然を拒否した現代人が、文化的な生活という“人造の海”で溺れているような気がする。
一年中エアコンで快適な温度をキープし、乗り物にカラダを運んでもらい、厳しい衛生管理の中で、病原菌どころかペット以外の生物と接触することもほとんどないような生活。食糧生産は単なる職業のひとつとして分業され、大半の人々は食料獲得のための直接的な体験を全くしないままコンクリートの建物の中でそれを得ている。こんな不自然な生活をしている我々文明人が、どこかおかしくなったってべつに不思議でもなんでもないだろう。
そして・・・身体感覚を喪失しつつある中で“観念”なんてものも、乳の海に優るとも劣らぬ恐ろしい海だろうと思いつつ・・極めて観念的なこの一冊を読み終えた。
それにしても、情報化社会を鋭く批判しているこの書物を「情報センター出版局」という名前の会社が出版しているというのはブラックなジョークなのだろうか?

『乳の海』
藤原新也 著
株式会社情報センター出版局 発行
昭和61年4月6日 初版第1刷 刊

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