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『北アルプス 大日岳の事故と事件』

7年前に起こった大日岳の雪庇崩落による遭難事故・・・
●2000年3月5日、文部省(当時)登山研修所主催の大学山岳部リーダー冬山研修会の研修中、大日岳山頂付近で巨大な雪庇が崩壊し11名が転落。研修生の学生2名が雪崩に流されて行方不明となり、その後の捜索により5月と7月に遺体となって発見された。
●2000年4月、事故原因を明らかにし、再発防止のための方策を探るため、雪氷学、測量学、登山など各方面の専門家の力を結集して「事故調査委員会」が設置され、2001年2月に報告書『北アルプス大日岳遭難事故調査報告書』が発表された。
●2002年6月、所轄署である富山県警上市署は研修会の講師10名、所長、専門職に対して事情聴取を実施。そして、主任講師であった山本一夫氏、死亡した2名の担当講師の高村真司氏は同年11月に業務上過失致死罪容疑で富山地方検察庁に書類送検された。
この時点で、山岳遭難「事故」が、「事件」となった。

Photo山の遭難に司法が介入するということはこれまであまり想定されていなかった。
誰もが認める、日本でも屈指の優秀な登山家である山本一夫氏は、遭難対策や後進の指導などで日本の登山界に大きく貢献してきた人だが、この「事件」で“被疑者”にされてしまったのである。2004年6月9日に富山地検が不起訴処分の決定をするまでの間、二人の登山家を守ろうとした人々の戦いの記録、そして事故の原因を解明しようと真摯な努力を続けてきた人々の活動の記録が本書である。
何らかの組織に関わりながら登山を志している人にとってはぜひ一読する価値のある文献だと思う。

それにしても・・
事故報告の席上での山本一夫氏の発言は、重く心に響く。
「わたしは日頃、登山中の事故に『不可抗力はない』。事故はすべて自分たちのミスによって、『起こるべくして、起こるものだ』と言い続けてきました。山に登るときはその気持ちをもちつづけて来ました。
 今回の事故は私のミスによるものだと思っています。ご遺族の皆々様に、この場をお借りして、あらためて深くお詫び申し上げます」

この発言を巡っては文科省が激怒し、各方面でたいへんな物議をかもすことになった訳だが、この短い言葉の中に、この人の“登山観”とリーダーとしての資質、そしてその人柄が端的に現われていると思う。
私は一度だけ山本氏とお話をさせていただく機会に恵まれたことがある。わずかな接点ではあるが、本当に誠実で潔癖で、信頼に値する人物だという印象を受けた。そして、本書を通じてさらに尊敬の念を深めた。

『北アルプス 大日岳の事故と事件』
2007年9月20日 初版第1刷発行
株式会社ナカニシヤ出版 刊
編者/斎藤惇生

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