『ミッドナイト・クライシス』
急死した高校時代の同級生「ルリ」の“ダンナ”と暮らす主人公「銀子」、白人と結婚し、カリフォルニアでリッチでスノッブな生活をしている別の元同級生「有為」・・・
久しぶりに再会した有為は「妙に若々しく瞳をらんと輝かせた」、違和感のある外見になっていた。
不審に思って聞くと「必要にあわせて、自分の中身を捏ねなおしたら、外見もこういうものになっちゃったんだわ」と答える。
その“必要”とは・・・
「ある日、ちょうど、ここの坂道をフォカッチャ屋のとこまで歩いてた時、いちどきに、暗い出口の見えないトンネルの中に迷ってしまったようで、ああ、わたしはどうなるんだろう、女として現役のわたしは、もうすぐ終わりか。もう、このまま、ゆっくり、年をとっていくのか、やだ、やだ、やだ、絶対にやだ、って、もう、それしか考えられなくなって」
んで、結局彼女は
“すべての状況をぶっこわして、夫とは距離を置き、新しい恋も手当たり次第やってみて、突然、妊娠したかもしれないって騒いでるわけね” と主人公に冷ややかな目で見られながらも、最終的には年若い男を手に入れ、40代後半の高齢出産をやりとげ・・
アメリカ、日本、チベットと脈絡なく舞台を移しながら、現実感がないままにストーリーが進行していくのだが・・。
タイトルの「ミッドナイトクライシス」というのは、主人公が「ミッドライフクライシス」という言葉を聞き違えたという設定だが、確かに性愛の対象としてスポイルされていくのだろうという予感に絡め捕られた、更年期にさしかかった女性の心理としてはその方がリアリティのある表現かもしれない。
極にゃみ的には、全く価値観の違うクラスメイトのひそひそ話が聞くともなしに聞こえてきたよな読後感・・・じたばたしたってなぁ。
『ミッドナイト・クライシス』
茅野裕城子 著
集英社 刊
2007.10初版第1刷 発行
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コメント
>女として現役のわたしは、もうすぐ終わりか…
この年代の“男たち”も同じようなこと考えるらしい…
仕事も家庭も趣味も充実している男が、若い女にハシル…
結果は悲惨。
事実は小説より奇なり
にゃみさん、おっはー…ってなんか軽いご挨拶。
東京の朝は薄曇…
ベランダから見える桜の蕾、今にも開きそう。
今年もあぶないなあ、なんだかね。
投稿: ミミズ | 2008年1月20日 (日) 09:08
ミミズさん、まいどっす。
ミッド“ライフ”クライシス、の方は、むしろ中年男性に多かったりするみたいですね。
男も女も「不惑」の年を越えてなお惑うのは・・
肉体の衰えが昔に比べて速度が遅くなった分、精神年齢も低いままに推移しているのでは。
人生わずか50年・・の頃の人たちはハイティーンですでに大人になって、30で完全に自立して・・だったんだろうけど、
平均寿命が延びた分、成長も遅くなってるのかも。
ま、自分を省みてそんなことを感じたりするんですが。
投稿: にゃみにゃみ。 | 2008年1月20日 (日) 16:42
>中年男性に多かったりするみたいですね。
性欲が“男”のバロメーターと思っているみたいで…
中年になると、その衰えに愕然とするみたい。
それも自然の摂理なのにね。
でも、いつも鏡を持ち歩き、服装に気を使い、髪の毛の量に
一喜一憂している。
まあ「こ綺麗」にはなっていくんだけど…
>精神年齢も低いままに
それゆえ、受ける奥さんは…地獄だわさ。
こんばんみ~にゃみ姐さん。
いつも面白い本のご紹介、楽しみ♪
これからも、続々と…たのんまっせ。
投稿: ミミズ | 2008年1月21日 (月) 01:15