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『自殺する細胞』・・アポトーシスとは?

細胞には、あらかじめ「自殺プログラム」が組み込まれている・・
Photo「がんになるということは、細胞の根源的な望みであり、多細胞生物であれば避けることのできない基本的事象である。」そうなんである。ひょぇぇぇぇ。
ヒトはどうしてがんになるのか、がん治療の現状、免疫システムと細胞の自殺プログラムについて・・・など、がんという病気についてあまりにも何も知らないことに気づいて、紐解いてみた一冊。

地球が誕生して46億年。その悠久の歴史の中で、約1/7に相当する6~8億年が経ったころ、バクテリア型単細胞生物が発生した。そこから20億年かかって、有核単細胞生物、つまり原生生物が誕生。さらに10億年を経て、多細胞生物が生まれた。
多細胞生物は、それぞれの細胞間で機能分化とコミュニケーションを必要とする。細胞全体が、一個の生命体としてその生命を維持するためには、細胞同士の協調が欠かせないのである。
んで、全体の調和を乱す細胞の存在は、その生命体にとって非常に都合が悪い。そこで、何らかの瑕疵を生じた細胞・・例えば、遺伝子的に欠損したものなどは自殺するようなプログラムが組み込まれた。全体にとって不要となった細胞を自死させるこの仕組みを「アポトーシス」と呼ぶ。ヒトの成人では、毎日約3000億個の細胞がプログラム細胞死していると言われている。細胞レベルでみれば、生物の中では「生」と「死」は一体のもので分断なく存在しているのである。(これに対し、受傷などで強制的に死に至るケースを「ネクローシス」と言う。)

ところが、この自殺シグナルを無視して勝手に「死なない選択」をする細胞が発生することがある。いわば、個体の一員としての自覚を棄て、勝手に増殖してしまう細胞群。つまりそれが“cancer ”=がん、ということらしい。
特定の部位で発生した忌まわしい腫瘍が、転移によって身体中に伝播し、ついには宿主を死に至らしめる「がん」は、「悪性新生物」などと呼ばれ、まるでインベーダーかエイリアンみたいに外部から侵入してきて悪さをするモノ、というイメージがあるが、実は単細胞的先祖がえりを果たした自分の細胞・・
幾重にも張り巡らされた防御システムがあるにも拘らず、それらをすべて潜り抜けて発症してしまうのは、不幸な偶然がたまたま重なってしまって起こることのようだ。たまたまいつもより早く家を出たら、偶然にも途中の信号にも引っかからなくて、そしたらいつもは乗らない列車に間に合ってしまい、なぜだかその列車が脱線して・・的な?

がん、老化、免疫・・極めて専門的な内容を、非常にわかりやすく読むことができた。それにしても・・全体の利益のためには異端児を排除せねばならないというあたり、人間社会の縮図を見るようでもあり・・ってーことは、あまり生産にも寄与せず、ヨノナカのお役にたってない極にゃみ的には、もしも一細胞だったらアポトーシスの対象だなとコワくなったりなんかして・・ぞぞぞ。

『自殺する細胞 アポトーシスががんと老化を防ぐ』
集英社 刊
山本三毅夫 著
2001年4月 初版第1刷 発行

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