スロー快楽主義宣言!
“100万人のキャンドルナイト”を提唱した辻信一さんの本。大企業や資本家がお金を注ぎ込んで作りだした「快楽」を、お金を出して消費するという“旧快楽”を見捨て、全く違う次元に立った“新快楽”主義を提唱。よく耳にするようになった「スローライフ」という言葉の、本当の意味がよくわかる一冊。
産業革命以降に発生した今の価値観を転換していかないことにはどうにもなんないんだろうな、と感じている私には、いろいろなことがストンと“腑に落ちる”本だった。
人口はもう増えなくていいし、経済発展もしなくていい。必要なのは、資源を浪費しなきゃ成り立たない今のライフスタイルを見直して、地球のサイズに合った適正な人口&システムに落ち着くところまでソフトランディングさせる叡智(あるいはテクノロジー)だ。
叡智を持たない極にゃみ的には、“消費”ということについてもう少し慎ましくていいと思ってるし、ちょっとくらい不便でも“ナチュラルな豊かさ”を愛していたい。ましてや、身体性を排除するよな「ラク」なんかいらない・・
文中から少し抜粋してみる。辻氏による“旧快楽”とは・・
『 専門家や大企業に牛耳られた快楽を、お金を出して、消費する。こういう快楽観がぼくたちのこれまでの主流だった。これをぼくは旧快楽主義と呼ぶ。旧快楽の特徴ははた迷惑なものが多いこと。・・(略)・・他の生物の苦痛を引き起こしたり、生態系を破壊したりする。自然環境が壊れれば、追い求めているはずの快楽そのものが成り立たなくなるわけで、それは持続可能な快楽とは言えない。
旧快楽はまた多くの場合、希少価値に基づいている。多くの人々がダイヤモンドにあれほどの快楽を見出すのは、それが希少だからだ。希少な価値は競争を生み出す。・・(略)・・』
そして、新快楽主義とは・・
①競争型ではなく、共生型の快楽を基本とする。
②エコロジカルで自然、生き物として自然環境と調和的な関係の中にある快楽。
③旧快楽がしばしば競争や戦争を引き起こしたのとは逆に、平和的。
また、この本では、さまざまなエコロジストたちの言葉を引用しており、それらも面白い。
詩人のゲーリー・スナイダーによる『野生の実践』からの抜粋
『 世界はただ見ているだけではない。耳を澄ましてもいる。ジリス、ハシボソキツツキ、それにヤマアラシに対する、無礼で思いやりのない言葉だって聞き逃しはしない。(昔ながらの教えによれば)人間以外の存在は、自分たちが殺され、食料として食べられるのを気にしてはいない。だがその際、彼らは、喜びと感謝の言葉が人間の口から聞かれることを期待しており、自分たちが粗末に扱われることをひどく嫌う。』
ジリス、ハシボソキツツキはまだしも、とても“生命体”とは言えないような不自然で劣悪な環境で“製造”されている、牛や豚や鶏の意見を聞いてみたい。彼らに生きる喜びはあるんだろうか。とてもありそうな気がしないけれど・・・
★この件について知ってください!→ココ!
『スロー快楽主義宣言! 愉しさ美しさ安らぎが世界を変える』
辻信一 著
集英社 刊
2004年8月 初版第1刷 発行
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