『養老訓』
『バカの壁』で一躍人気が高まった解剖学者・養老孟司さんの話題書。ユーモラスな禅画を多く残した江戸時代後期の禅僧・仙厓の作品「老人六歌仙画賛」をビジュアルに使い、表紙を見ただけで読みたくなる一冊だ。宣伝コピー曰く「年をとるすべての人に捧げる平成版養生訓」ってことで、訓の壱「不機嫌なじいさんにならない」に始まり、死について考える訓の九まで、養老さんらしいユニークな発想に満ち溢れた書。70歳の誕生日の記念に刊行されたものだそうだ。
『(略)山道を歩くと踏んでいる地面の質が変わる。都会の人はそういう生活をしていない。
固くて平らな地面しか歩かない。
すると結局、脳みそがサボる。』
・・やっぱ鋭いな。んで、いっそのこと都会の階段を一段ずつ、高さや奥行を変えたら面白いかも、と。
『危ない、そんなの大問題だ、と思われるでしょうか。しかし、どうして問題が起きてはいけないのでしょう。もともと人生なんて問題の集積だと思うのですが。』 わはは。
『老人になることを悪いことだと見る空気があるから、趣味も若々しく、となるのです。でも、みんな年相応に老人化していいのではないでしょうか。』
そう、年相応でナニが悪い。見た目20代の50歳になんかなりたくもないゾっ(ってなれないけど・・)。
とぼけているようで、実はとても“大人”な思想で貫かれている。しかし世間的にはこのような発想を“若々しい”と言うだろう。
加齢にはもちろんマイナス要素はある。しかし人は日々成長する生き物だし、知識の蓄積だけでなく、ものの見方が深くなったり、いろんな“欲”から自由になったり、いいことだってたくさんあるんだろう。70歳になったってアタマが柔らかい人はフレッシュだし魅力的だ。
『老人にできることは、他人を無理に変えることではありません。せいぜい、若い人が「年をとったらあんな年寄りになりたいな」と思うような存在になることでしょう。』
・・いいですなー。
『思うに、私が講演会だのなんだのと呼ばれるのは、幸せそうなじいさんを見たいからじゃないでしょうか。笑ってる年寄りを見ていたいんでしょう。』
・・そうですなー。見たいですよ、養老センセ。年をとるのって、ステキですよ。
『養老訓』
養老孟司 著
新潮社 刊
2007年11月20日 初版発行
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