有機農法は本当に“よい”のか?
永田照喜治氏『美味しさの力』より・・・極にゃみ的読み①虫や動物が植物を食べて育ち、それらの排泄物や死骸を微生物が分解し、それを植物が吸収して育つ・・というのが自然界のサイクル。堆肥や厩肥などの有機物を農作物の肥料として利用することはある意味で合理的だ。
しかし、植物は有機物をそのまま取り込むわけではない。窒素・リン・カリの無機物に分解されてはじめて養分として利用される。つまり植物にとっては、有機肥料であろうが化学肥料であろうが、必要な成分がバランスよく含まれていればいいのである。だから、「有機肥料で作った野菜は安全で、化学肥料で作った野菜は悪い」ということではマッタクないのである。(ちなみに写真はトマトの花)
ところで「有機肥料」とは何か?ちょっとネットで調べてみた。
家畜の糞(厩肥)、落ち葉など(堆肥)、魚粕・骨粉など動物質肥料、なたねや大豆などから油を絞った後の油粕などがある。特定の成分のみが含まれている化学肥料と違って、複雑にいろいろな成分が含まれ、総合的に土壌微生物を増やすなど土壌改善にもつながる効果があるので、よい作物が作りやすいとされている。しかし、有機肥料は即効性がないため、作物が吸収するまえに降雨などで流れ出し、下流の水系や海の環境に多大な影響を与える点が問題になっている。
重大な汚染事例としては、北欧のバルト海が挙げられる。この閉鎖海域を囲む北欧の国々は、バクテリアが活発でない岩だらけの土地であり、畜産が盛んなために牧草地に大量に撒かれた厩肥が雨の度に流れ出し、海底深くに沈殿。海水温が低いため分解が進まず、海水中の酸素を消費した結果、海域の約半分にあたる部分が完全に酸欠のために「死の海」になってしまっているという。
日本でも、閉鎖水域における農業排水による汚染は問題化しており、東京湾、伊勢湾、琵琶湖南湖、長崎の大村湾などでも水質悪化が進んでいるという。
ってーコトは・・
「有機農法はよい」と単純に考えることはできないってことだ。
ううーん、なるほどねー。
ところで・・植物は無機物しか吸収しないか、と言えば、実は有機物を吸収しているという調査結果もある。日本で初の狂牛病が確認された2001年9月。肉骨粉の危険性が認識され、10月には動物性有機肥料が全面的に禁止されたのだが、それまでは血粉、蹄角粉、皮革粉、フェザーミール(鶏の羽)などあらゆる畜産廃棄物が利用されていたそうだ。有機肥料という名の商品にしているけれど、要は産業廃棄物処理とちゃうんか・・『美味しさの力』の中でも、次のような指摘がある。
「今、巷で行われている有機栽培はリサイクルを通り越して、家畜の糞尿処理のためのゴミ捨て場と化しています。(略)
しかし問題なのは有機肥料の質と量です。じっさいこれが大問題なのです。ご存知のとおり、合理性の至上命令のもとに、家畜の大半は濃厚飼料を大量に与えられて育ちます。狭い厩舎でほとんど身動きもできずに、ブクブク太らされて・・・・。病気にかかりやすくなるのもあたり前、そのために抗生物質、ホルモン剤、果ては成長促進剤まで投与されます。文字通り薬づけの状態なのですが、それでもなお病気持ちの家畜は多く、これは有名な統計ですが、驚くことに、養豚の90%以上が潰瘍にかかっています。
こんな動物たちの糞尿から堆肥が作られているのです。」
「堆肥などの有機肥料が土中で発生させるメタンガスもばかになりません。空気中では好気性発酵によりメタンガスに変わることはないのに、肥料として土に入れたとたんにガスを発生するのですから厄介です。植物の根を傷めるだけにとどまらず、有機肥料は環境破壊の主原因たり得るから怖いのです。
有機肥料はもともと、生態系のサイクルを狂わせないというのが謳い文句のはず。それがこのように環境破壊を招いたのでは、まさに主客転倒です。本来の有機農業とは植物が地球環境と有機的に関わりあい、生態系の中で自分の役割をきちんと果たしているようなシステムであるべきです。私はとり立てて自分のやり方が“有機的”であるとは言いませんが、少なくとも現今の有機栽培よりはかなり有機的であると確信しています。」
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