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『農から見た日本 ある農民作家の遺書』

この半世紀、日本は「近代化」というスローガンの下でPhoto_2利益至上主義・効率至上主義を最良の 価値観として国を挙げて驀進してきた。それはとりもなおさず、“工業”の手法であり、そんな中で軽視され切り捨てられた挙句に瀕死の状態に追い詰められてきたのが「農」。
農地の荒廃、食料自給率の低下・・長い年月をかけてこの国の祖先たちが培ってきた叡智、土地から収奪しない安定的サイクルで永続的に食料を生産していた“豊葦原瑞穂国”はもはや見る影もなくなってしまった。

「まえがき」から抜粋する。
『この本は恥ずかしながらの自分史です。遺書のつもりで書きました。
(略)もし私が書かなかったら、この間のこの国のぼう大な数の百姓衆の無念の思いや叫びは、世間に知られることもなく歴史とともに風化してしまう。そんな焦りと義務感のようなものが、私をかりたてました。とはいえもう十年若かったらたぶん書けなかったでしょうし、もちろんその逆でも不可能であり、それゆえに私の、もう少し大げさにいえば私たちの世代の次世代にあてた遺言状といってもいいのではないかと考えています
。』

「農民」の視点からこの国の変貌を凝視してきた著者は、国土が狭く人口が集中しているからこそ「地産地消」、「ほどほどの安定した小さな循環型社会」に希望を見出す。

再び「まえがき」から抜粋。
持続的、永続的な農業と安全な食と健やかな暮らしを目指すとすれば、
この半世紀で壊してしまったこの三つの修復、回復しかないと私は考えています。
それは直線的に昔に帰ることではなく、現代の技術と知恵で原理原則を、
決して行き詰ることのない循環に転換していくということです。
きっと時代はそう動いていくでしょう。それぞれの立場で、やれる範囲で一人でも多くの人がその流れに加わってくださることを祈るのみです。』

『農から見た日本 ある農民作家の遺書』
山下惣一 著
清流出版 刊
2004年7月22日

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