2008年度 指導員研修会
秋の恒例行事、大阪府山岳連盟の指導員研修会が4日土曜日に実施された。今回のテーマは、「岳人」735・736に掲載された「クライマー・登山者のための最新セルフレスキュー技術・岩場編」の検証。
この記事の主張は、これまではまず要救助者が荷重しているロープを固定してビレイ態勢から脱出し、その上でアクセスするという方法が技術書などで紹介されているが、それは「救助法としては全く間違っている」というもの。
「正しい、絶対的な、原則は『負傷者にアクセスすること』」と述べ、その方法のプライオリティとしては
ロワーダウン>カウンタークライミングによるロワーダウン>カウンターアセンディング&カウンターラッペル の順であると説明されている。
要はカウンターウエイト(要救助者を重しにする)によるアクセス&ロワリングorラッペルが基本であり、後半はそれらの応用として結び目の通過やマルチピッチでの方法論などを展開。
ロワリングが可能であればそれが第一であるのは論ずる必要もないが、次善とされている「カウンタークライミングによるロワーダウン」はどうだろうか?
要救助者が見える範囲にいて、かつロワリングのコントロールが容易なケースであれば有効だと思うが、スポートのシングルピッチならともかく、アルパインクライミングではそのようなシチュエーションばかりではない。
「固定という方法を選択しない」という作戦は当然アリだが、方法論として完全否定していいのかはちょっとギモンだ。実際にやってみた極にゃみ的感想・・
・カウンタークライミングは、要救助者の重さで引かれているので、しっかり張られたトップロープ状態となって登るのはラク。しかし、要救助者は救助者が登った分ずるずると引き下ろされるので、壁の形状や負傷の状態によっては危険だと思う。
「引き下ろされ役」もやってみたが、かなり恐い。
また、最終支点にかかる荷重が救助者の動きによって一定でなくなる(衝撃荷重がかかる)?可能性もあるのではないかと思うがどうなんだろう?例えば、ロワーされている要救助者が、何かでっぱりなどに引っかかって、その後ロープがたるんだままで一気に落ちるなど。いかにもありそうでしょ。
・カウンターアセンディング(本書ではナゼか「カウンターユマーリング」と書かれているんだけど、ロープの登り返しをユマーリングって言わないよね、今どき。ユマールって絶滅種だし。)は、要救助者が動かないので、最終支点への荷重は一定?
・いずれにしても、最終支点がどんな状態なのかわからずに登るわけなので、救助中に支点が抜けてもう一度墜落する可能性があり、それなりのリスクがあることを自覚して行うべきだろう。
テンションロープの固定が必要かどうかはシチュエーションによって、そしてそのレスキューのタクティクスによって異なるだろう。「しない」のと「できない」のは全くハナシが違うので、現実的にするかどうかはべつにして、とりあえず「できる」べきだと極にゃみ的には思っている。
それにしてもさっすがガメラさん、かなり過激な・・。
これが一般商業誌ではなくて文登研の「登山研修」なんかだったら別にいいと思うんだけどね?
| 固定リンク
コメント
ロウプを固定するのが間違いとは間違っていますね。カウンターウエイトクライミングすることで要救助者をロワーする方法は、宙吊状態からテラスに直接下ろす場合くらいでしょう。ロウプを登る方法はバックアップが抜けています。いずれも墜落時の最終支点の強度が問題であることが強調されねばなりません。ロウプの連結方法は非常にまずいですね。結び目通過はスタンダードとの比較で優れているとは思えませんし、バックアップが足りません。用語ではロワーダウンは山岳では使われません。日本で定着はしているようですが、ロワリング、ロワーを使うべきです。菊池氏の書いたものは危ういところが多いので、全てをこれが最良だと思わないようにと注意すべきでしょう。
投稿: 山頂 | 2008年10月 7日 (火) 06:03
山頂センセ、コメントありがとうございます。
細部まで検証をしたわけではないのですが、あの連載に関してはみんな「???」って思っていたみたいで、少しだけでも試してみる機会を持てたことはよかったと思います。
「雑誌に載っていることは正しい」と条件反射のように信じ込むタイプの人は世の中に少なくないですから、メディアにはそれなりに責任があると思うのですが・・・
投稿: にゃみにゃみ。 | 2008年10月 7日 (火) 08:34