『イヴの原罪』
ネタバレするけど・・20年も前の作品だからまぁいいか。
平凡なOLだった主人公が、ふとしたことから身寄りのない初老の資産家が住む大邸宅の離れで暮らすことになる。ところがルームメイトが事故で急死し、遺品の中から見つけた小説の原稿を善意から自分の名前で新人賞に応募したら入賞してしまい・・というサスペンス。
チョー気が小さい極にゃみ的には「ゼッタイばれるから早く打ち明けなきゃ!」とハラハラした。だって“文章”って“その人”だから、見る人が見たらスグわかるもん。それに、小説を書く才能がない人には絶対書けないから。次作が出せないともう終わりでしょ。
それはともかく、62歳の資産家とヒロインの関係がまた、ややこしいというかなんというか・・
まぁ“そういう関係”になるんだけど、ヒロインのカレシには嫉妬心を抱かないのに、自分と同世代の“文壇の巨匠”がヒロインに手を出すと平常心ではいられなくなるというあたり、リアルなのかなぁと思う一方、アラカンになってもそんな激しい執着心にとらわれるものなのだろうか?と不思議な気持ちになる。
“執着すべきでないものに執着してしまうからややこしいことになる”ってことを、身をもって思い知った過去がある私だから・・(だから逆に“執着する人”はとてもニガテ。速攻逃げ出したくなる)。
けれど、この物語のアラカンさんは、とても理知的に自ら幕を引いて消え去っていく。
自分の前から消えていった人たちの恩恵をきっちり自分のものにするヒロインを人は「悪女」と呼ぶのだろうか。
『イヴの原罪』
新津きよみ 著
1990年8月 出版芸術社(当時)刊
現・光文社文庫
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