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『特攻からの生還 知られざる特攻隊員の記録』

菊水三号作戦により、Suzuki_kanji昭和二十年四月十七日、鹿児島県出水基地から出撃した海軍の陸上爆撃機「銀河」は、ほかの機の故障によって予定時刻を2時間も遅れ、しかも単機出撃となり、途中でいろいろなアクシデントに遭いながらも敵空母に体当たりを決行。3名の搭乗員のうち2名は死亡したものの、機長であった著者のみが奇跡的に救助され、捕虜として囚われるという数奇な運命をたどる。特攻隊を志願し、出撃するまで、そして出撃命令が下ってからの揺れ動く心理をつぶさに描いた自叙伝。
前書きから引用する。

現代の人々は、「特攻」というと、スリルとか、豪快だとかと思い浮かべるかも知れませんが、本当に弾丸の飛び交う中を飛んだことがないので、無理からぬことと思います。とにかくいまのヤングの方たちと何ら変わらぬ若者であったことだけは事実です。
「特攻」の心理を、いまの人たちに理解していただけるかどうか自信はありませんが、私にとっては、その当時の隊員の考え方を、この国の歴史の中に残すことが、私の残された人生での勤めではないかと考え、あえて筆を取った次第です。


大正生まれの著者が、長年封印してきた特攻隊時代の記憶を辿りながら綴ったこの作品は、文章としては非常に読みにくい部分もあるのだが、吐露したい思いはなんとなく伝わる。健康な若者が確定した死に向かっていく日々・・もちろんその気持ちをストレートに理解することなど不可能だと思うけれど、これを書き残すことが奇跡的な生を得たこの人のミッションだったんだろうし、それを受け止めることは後に生まれた者の役目なんだと思う。

『特攻からの生還 知られざる特攻隊員の記録』
鈴木勘次 著
光人社 刊 2005年1月 初版発行


ところで・・・

1001010035今年の正月、初詣にでかけたとき、宝塚聖天さんの隣にある墓地の奥ににこんな建物があるのをふと見つけてしまった。今まで何度も行ったことのある場所なのに、全く気づいていなかった。なんだろう?と思って・・
はじめ、なんだかわからないままにお堂に入ってみたのだが、時々、特別な場所で感じる、言葉では表現しにくい奇妙な“気”がそこにはあった。それは、震災の後、そこここに漂っていたものや、福知山線脱線事故のあとにあの現場を通りかかったときに感じたものと少し似ている。透明で静謐な感じの・・亡くなった方がここにいるわけではないだろうに。遺族の方の哀しみがここに定着してるんだろうか。

1001010033神風特別攻撃隊之魁 甲飛十期之碑」・・海軍「第十期甲種飛行予科練習生」の中から、「神風特別攻撃隊」に配属されて命を散らした方々が祀られているらしい。
20歳にも満たない若者が俄か仕立ての兵士にされ、爆弾を満載した零戦で体当たり攻撃を行ったあの「特攻隊」。
けれど、70年も前の悲劇にどうしてこんなに反応してしまうのだろう?と自分でも不思議だったのだが、涙がとまらなくなってしまったのだった。

そしてその後、横山秀夫さんの『出口のない海』を読んだり、上記の本を読んだりしてみた。

そういう一連の思考の中で、自死を考えるということをどう位置づければいいのか。作家の多島斗志之氏が失踪されたのもちょうどそういうタイミングで、さらにいろいろと考えてしまったのである。が・・いっこうにわからない。

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