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『原子炉時限爆弾 大地震におびえる日本列島』

地震国日本における原発の危険性を指摘し、Photo地震や津波による重大事故を未然に防ごう、とジャーナリストの広瀬隆氏が昨年8月に刊行した一冊。長年原発問題に関わってきた著者が「黙って生きることは、のちの世代に対して、大きな罪」として、近い将来必ず起こるとされている東海大地震による原発事故を食い止めるべく執筆したものだが、東北でその「最悪の事態」が現実となってしまった。
原発の耐震性能は、いろいろな意味で非常に脆弱なもので、巨大地震には対応できないそうである。今回起こった冷却システムの機能停止についてもその通りのことが指摘されており、“想定外”を振りかざす関係機関がこのことを知らなかったとすれば、それは“罪”、知っていて放置したのであれば、それはとてつもない大罪であると思う。

『原子炉時限爆弾 大地震におびえる日本列島』
広瀬隆 著
ダイヤモンド社 刊
2010年8月 初版第1刷 発行

同氏の著作に関しては“極端な表現”が散見されることから批判的な意見もあるのだが、“極端な表現”をしないと受け入れられない平和ボケした感性も問題だろうと思う。

我々山ヤは、日頃からヒヤリハットの事例をしっかりと受け止めて、遭難事故をなくそうと努力している。しょーもないミスで死に直面することもある遊びをやっているから、一般の人より多少危機管理に対する意識は強いのかもしれない。
けれど、事故が起きたらそれを分析して次に同じことが起きないようにするのは“普通に”必要なことじゃないのか。
2007年に柏崎刈羽原発で非常に危険な状態になったことに学ばず、今回の福島原発の事故を引き起こしてしまった日本という国。原爆の悪夢が蘇ったかのような今回の重大事故・・・
なぜこんなことになってしまったのだろう。

「電力会社へのあとがき」から、著者の血を吐くようなことばを一部紹介しておく。

以下引用***

 すでに商業運転中の原子炉54基と、高速増殖炉“もんじゅ”と、六ヶ所再処理工場という、日本を破滅に追いやる可能性が高い危険なプラントが日本中に存在している。これらをつぶさに調べてみたが、そのどれもが、地震の直撃を受けた場合に、とてつもない危険を持っていることに確信を得た。なぜなら、これらはすべて地球と日本の成り立ちから、共通の弱点を持っているからである。
(中略)
 だが今は、あえてそのすべての運転を即刻止めろと、求めないようにしたい。まず何よりも、この問題に対して、第一歩を踏み出していただきたい。すべてを止めないと危ないことは分かっているが、時間的な切迫感から、申し上げたいことがある。東海大地震という、100パーセント起こる巨大地震が、その歴史的な周期性をもって、日本の中心部、富士山を噴火させたフォッサマグナ地帯で、静岡県の目の前に迫っていることだけは、すべての人が認めているし、中部電力も認めている。
 浜岡原発の危険性について、これまでのように実りのない対立した論争を続けるより、今は、まず日本人が「共に」生き延びることが第一である。残された時間はあまりない。中部電力は、浜岡原発の一号機と二号機の危険性に気づいて、これを廃炉にすることを決断することができたのだから、残っている三号機、四号機、五号機も止めて、内部に入っている危険なウラン燃料を、静岡県外のどこか安全な場所に移してほしい。
 引き取る場所がないというのなら、国会議事堂内や、名古屋市の中部電力本社ビル、霞ヶ関の経済産業省ビルに移すことを、真剣に検討するべきである。これらは、皮肉で列挙しているものではなく、この問題に関して最大の責任を負うべき場所である。それほど事態は切迫しているのだ。(後略)

引用ここまで***

極論だろうか?不安を煽る“悪書”だろうか?
専門的な知識を持たない私には判断できない。だが、今回の事態に関して“専門家”たちは「想定外」と言うけれど、この本では“想定”しているではないか。
現実となってしまった悪夢。このようなことは絶対に、二度と起こしてはならないことは疑いなき事実である。

ダイナミックな地殻変動の結果生まれた日本列島。地球の歴史からすれば、今ある姿は仮のもので、どんどん変化を続けている。しばし平穏期にあった日本列島付近は再び活動期に入っているとの指摘もある。

すべての原発を今すぐ停めることは無理かもしれない。しかし、危険な断層上に建つ浜岡原発をはじめ危険が切迫しているプラントは、今すぐ停めて欲しいと思う。
そして、人類が制御することのできない原子力なんてものに頼らないと成り立たないヨノナカの仕組みを、今こそ見直していかなければと強く思う。

★2011年3月16日 ダイヤモンドオンライン 広瀬隆
破局は避けられるか――福島原発事故の真相」

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コメント

怖い・・この一節が 全部語ってる

「10年後に、日本という国があるのだろうか」と尋ねられれば、「かなり確率の高い話として、日本はないかも知れない」と、悪い予感を覚える。…(中略)…この先には、まったく報じられない、とてつもなく巨大な暗黒時代が待ち受けているのだ。その正体は、想像したくもないが、人知のおよばない地球の動きがもたらす「原発震災」の恐怖である。--と。

投稿: やっすん | 2011年4月 2日 (土) 08:02

怖いです。ホントに怖いです。

福島は、関西から遠いから…と安心する気にはとてもなれません。

「原発を止めたら停電が」とか、
「石油資源が高騰して世界的にたいへんなことになるから」とか、、、

“識者”の方々はいろんなことを言っておられますが、
彼らは今回のことが“レアケース”だとでも思っているのでしょうか。
それとも、“これくらいの犠牲は払ってでも原子力政策を推進すべき”とでも思っているのでしょうか。

そこが怖いですね。

・・・核廃棄物の最終処理方法が確立してないって時点で、すでに原子力発電は取り入れてはいけなかったのだと思いますが・・・

この国の行方はどうなるんでしょうね。
市井の一市民として、どうすればいいんでしょうね。

投稿: にゃみにゃみ。 | 2011年4月 2日 (土) 17:25

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