« ナント(710)!7月10日は、マサカマサカの「3.5」! | トップページ | 技術委員会婦人部会合 »

『真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ』

大沼紀子さんの最新作で、文庫書き下ろし。
Photo女子高校生の主人公が、春休み中のある日、昼前くらいに起きたら、いつもは勤め先のスナックから酔っ払って帰ってきて床の上で寝ている母が不在。しかも母の荷物が忽然と消えている。そして、
「のぞみんへ
 おはよう!びっくりした?びっくりしたよね~? ごめんね。ハハは、ちょっと旅に出ます。」という置手紙があった。それまでも、たびたび娘をあちこちに預けては失踪するということを繰り返していた母なので、さして驚くこともなく、置手紙に書かれていた“腹違いの姉”を訪ねると、そこには真夜中にだけ開店するという謎めいたパン屋があって、姉は半年前に亡くなっていた・・・というストーリー。

6つの章がパンの製造工程
「Frasage―材料を混ぜ合わせる」
「Petrissage&Pointage―生地捏ね 第一次発酵」
「Division&Detente―分割&ベンチタイム」
「Faconnage&Appret―成形&第二次発酵」
「Coupe―クープ」
「Cuisson avec buee―焼成」
で構成されているのが、意味深長で面白い。

託卵するカッコウのような母と、母を反面教師として“まっとうに育つ”ことに必死な娘、謎多き笑顔のオーナーと口の悪いイケメンパン職人、もう一組のネグレクトの母子、さらには覗き魔やら、ニューハーフやら・・・なんだか不思議な登場人物たちが織り成す、なんだかあったかい物語。

この作家の作品は・・・、
『バラ色タイムカプセル』『ゆくとしくるとし』 もそうだが、ステロタイプな言い方をすれば“欠陥家庭”的な環境で、世間一般からすれば“ちょっとズレた”人々によってつむぎだされる独特の世界。飄々と、しかし温かなまなざしで語られるそれらのストーリーは、「ひとといっしょじゃなくてもええやん」、「自分が自分らしくあることを、常識とか世間体なんてもので否定しなくてええやん」、って言う感覚によって構築されている。多少なりとも、ステロタイプから逸脱しているものからすると、柔らかなカタルシスのようなものがそこには感じられるのである。

真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ
大沼 紀子 著
ポプラ社 刊(ポプラ文庫)
2011年05月 初版発行

|

« ナント(710)!7月10日は、マサカマサカの「3.5」! | トップページ | 技術委員会婦人部会合 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ナント(710)!7月10日は、マサカマサカの「3.5」! | トップページ | 技術委員会婦人部会合 »