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『コンタクトゾーン』

壮絶でぐいぐい引き込まれるストーリーが多い篠田節子さんの作品だが、これもまた。
Photo2001年に週刊誌で連載発表されたものだそうだから、バブルは完全にはじけた後だと思うのだが、「ワンレン」「お局」系(今で言う)アラフォーのリッチな独身女性3人が主人公。ブランドもの漁りとちょっとしたアバンチュールを求めて遊びに行った海外リゾート地でクーデターに巻き込まれ…というストーリー。そこまでは、国際政情にうといくせに円高にモノを言わせて東南アジアへ遊びに行く最低な感じの三人なのだが、凄惨な殺戮現場から辛くも脱出し、無人島でのサバイバルな数日間を過ごし、原住民が暮らす村に拾われ…というところから、たくましく変身していく。植民地支配の歴史を持つ多民族国家における革命派やらゲリラやらの闘争、土着の宗教とイスラムの対立、ありとあらゆる要素が怒涛のように盛り込まれている。

ストーリー展開も面白かったが、“未開”の農村で自然の恵みに感謝しながら八百万の神々と共存している村の存在に、いろいろな意味で深い示唆を感じた。

まるで近代化する前の日本を思わせる村は、長老たちで構成される長老会が決定権を持ち、相互扶助のシステムが見事に構築されていて、因習と思われるいろいろな事柄はそれぞれに深い意味があり… 

自然に対して神性を感じ、恵みに感謝し、脅威から守られるように祈り、大自然の中で、大自然の一部としてささやかに生きさせてもらうようなライフスタイル。
そこから逸脱しなければ、きっと自然はずっと変わりない恵みを人々にもたらしてくれたんだろう。時折嵐が吹き荒れたり、地面が揺れたり、そのせいで大きな波に襲われることがあったとしても。

『コンタクトゾーン』
篠田節子 著
毎日新聞社 刊
初出:2001年8月~2003年3月「サンデー毎日」連載
2003年4月 単行本発行

★この作者のほかの作品の極にゃみ的レビュー
『逃避行』
『純愛小説』
『転生』
『斎藤家の核弾頭』
『静かな黄昏の国』
『仮想儀礼』
『Χωρα 死都』

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