『砂の王国』
大手証券会社のディーラーとして億単位の金を動かしていた男が、リストラをきっかけに転落の一途を辿り、ついには所持金3円、ゴミ箱の残飯をあさる路上生活者となる。胡散臭い辻占い師と、知的障害なのか記憶喪失なのかほとんど口をきかないイケメンのホームレスを巻き込んで新興宗教を興すことにして、緻密に、計画的に事を運んで次第に大きな組織になっていく…というストーリー。
どん底まで堕ちた主人公が、金儲けの手段として新興宗教を興す、というストーリーは篠田節子さんの『仮想儀礼』にも共通するものだが、要は何かにすがりたいという思いがヒトにはあって、そこをうまく突くと簡単にだまされるってことなのかも。
狂信的になること、すがりつきたい思い、それは何も宗教だけのことではなくて、いろんな場面で垣間見えるけど、原発を巡るあれこれを見ていると、人は何かを「信じたい」んだろうなぁ、と思ってしまう。
『砂の王国』(上・下)
荻原 浩 著
講談社 刊
2010年11月 初版発行
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