『廃院のミカエル』
篠田節子さんの小説は好きでよく読むのだが、ホラー系のものはホントに怖い。不倫がらみのスキャンダルの果てに中東に左遷され、戦乱の中であわや命を落としかけた女性商社員の中山美貴、ギリシア人の夫を亡くし、3年経っても喪に服したようなキウソプロス・綾子、どこか陰のある美術修復師・吉園という三人の日本人が主人公。彼らが、陰鬱なギリシャの山奥にある廃院となった修道院に引寄せられるように迷い込んで、さまざまな不可解なできごとに遭遇する・・・という宗教がらみのコワいお話なのだが、「恐怖」という感情がどういう心の動きで生み出されるのか、といったことを考えさせられる面白い作品だった。
ギリシア正教、イコン、修道院・・・あまりなじみのない世界が描かれているのも興味深かった。
『廃院のミカエル』
篠田 節子著
集英社 刊
2010年11月 初版発行
★この作者のほかの作品の極にゃみ的レビュー
『コンタクトゾーン』
『逃避行』
『純愛小説』
『転生』
『斎藤家の核弾頭』
『静かな黄昏の国』
『仮想儀礼』
『Χωρα 死都』
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