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『ばんば憑き』

宮部みゆきさんの作品を久々に読んだ。Photo時代物人情ホラー(?)って感じの、まさに宮部ワールドな作品。江戸時代の下町を舞台に、さまざまな怪異譚が語られる。
「坊主の壷」「お文の影」「博打眼」「討債鬼」「ばんば憑き」「野槌の墓」という6編の短編集で、どれも“怖いもの”が出てくるのだけれども、“化けてしまった”それは、それぞれに哀しい過去を秘めている。それらがつむぐ物語には、人の心が織りなす哀しみと優しさが満ち溢れていて、読んでいて心癒されるステキな作品。

『ばんば憑き』
宮部みゆき 著
角川書店 刊
2011年2月 初版発行


宮部ワールドの地をなすものは、とても温かな人への思いやりであり、そこが好きなのだけれど、言葉遣いがまたいいのである。

「野槌の墓」の冒頭・・・

 子供というものは時に、親が返答に詰まるようなことを訊ねる。
 その日の加奈がそうであった。柳井源五郎右衛門の七つになるこの一人子は、
「ねえ父さま」
 丸い瞳で父を見上げて、こう問うた。
「父さまは、よく化ける猫はお嫌いですか」
 源五郎右衛門は、糊を付けた小さな刷毛を手にしたまま、首だけをゆっくりとよじって我が子を見おろした。

(中略)

 そこで源五郎右衛門は、返答に窮した親がよく打つ手を打った。
「加奈はどうだね?」と、問い返したのだ。
 子供はにっこりと笑った。
「タマさんは好きです」

言葉遣いが端正。気取ったところがなくて、ユーモラスなのに品がある。持って回った言い回しがなくてシンプル。すごい言葉の遣い手だと思う。

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