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『クジラの彼』

先日ご紹介した自衛隊三部作『塩の街』『空の中』『海の底』の後日譚的な短編集。表題作のほか、“トイレ”を巡って、Kujira航空自衛隊機の設計を担当する女性エンジニアと自衛官の関わりを描いた「ロールアウト」、腐れ縁の同期自衛官男女の顛末「国防レンアイ」、『海の底』の後日譚である「有能な彼女」、純情な若き自衛官の苦悩をコミカルに描いた「脱柵エレジー」、『空の中』の後日譚で、最高に魅力的な武田光稀三等空尉のその後… など。
それぞれに独立した話なので、この一冊から読み始めても問題なく楽しめると思う。作家本人が「ベタ甘で何が悪い」と開き直るくらいのホントの甘~い甘いレンアイ小説なんだけど、心が温かくなって、ほんのり優しい気持ちになれる有川ワールド。好きだなぁ。どの作品もとても素敵。

『クジラの彼』
有川浩 著
角川書店 刊
2007年1月 初版発行

著者インタビューもあります。
『クジラの彼』webKADOKAWA公式サイト

もちろん、フィクションなので、美化して描かれてはいるのだろうが、自衛隊の幹部、そして若手自衛官へのインタビューを繰り返して、リアルな実像をつかんだ上で練られた作品。映画「岳」で山ヤが見たら「・・・」って部分がいろいろあるのと同じで、当事者からしたら「・・・」な部分もあるのだろうが、一般人からはほぼナゾな組織のことが少しは垣間見られるという意味でも面白いと思う。実際には女性のファイターパイロットはいないそうだし、武田光稀サンみたいな魅力的なヒトがいるのかどうかは知らんが…

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