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『ブラックボックス』

 役所が後押ししているから安全、安心である。にもかかわらず、消費者は心理的抵抗を持っている。だから国民を啓蒙し、正しい科学的知識を浸透させることによって解決する。
 果たしてそうなのか?
 ここで証明されたのは、そうした絶対安全なはずのものが、驚くほど低レベルな人為的ミスや、単純な機械の故障、予期しない自然災害によって危険なものに変わる、ということではなかったのか。
 自然から離れることで、因果関係が見えにくくなってしまう。証明することはかなわず、証明できないから、そうしたものはないとする。感覚的な恐れや怯えは非科学的態度とされ退けられるが、人の五感というのは、高性能のコンピュータもかなわないほどの速さで、多くの要素を結びつけ、漠然とした気味悪さ、怖さ、嫌悪感といったものを喚起して、人に回避行動を取らせるものではないのか。(P453より抜粋)


それってまるで…

Photo「食」をめぐる問題を背景に展開するサスペンス長編。
美人アナリストとしてもてはやされていたヒロインは、ストレートのロングヘアとDKNYの白いパンツスーツに身を包んでマスコミに登場していたが、とある事件によって深夜の食品工場で働くパートタイマーに凋落。
そんなヒロインが一緒に働いているのは“研修生”という名目で集められ、悪条件で過酷な労働を強いられる外国人女性たち。肥料・農薬メーカーと組んで新しい農業を目指す野菜生産者。学校給食の現場で仕事に燃える栄養士…。
それぞれの現場で起きる問題が、複雑に撚(よ)り合わさって、ある疑惑が膨らんでいく…。

篠田「技術が暴走して、人工的なものが人間を含めた生態系に影響を与えていく。人間の叡智というものはどこまで及ぶものか、ということがテーマなんです。」

 …やっぱり原子力災害と根源は同じ。
一読して損はない、面白く、かつ恐ろしい作品だった。

『ブラックボックス』
篠田節子 著
朝日新聞出版 刊
2013年1月 初版一刷発行

湧水池にいるザリガニを食べた人が中毒を起こすという事件がおきて、調査の結果ザリガニの体内に異常発生していた藻の有害物質が蓄積していたことが判明する。それを受けて
P276「この地域だけではない。日本の農地のほとんどが、こういう状態なんですよ。我々世代の農業従事者の方々が、安く手に入るようになった化学肥料、窒素、リン酸、カリといった成分を、勘と経験をたよりに、時には指導員にすすめられるままに、無造作に土中に入れてきた。ここはスイカの産地だということになれば、地域全体でスイカだけ作る。同じ場所に毎年毎年、特定の作物を大量に作る。それで線虫がわけっば、薬で消毒する。出来が悪くなってくれば、再びどんぶり勘定で肥料を入れる。その結果が、これです。余った窒素分が、土に溜まって、地下水に溶け出す。そのために湧水池で有毒な藻がはびこり、今回のようなことが起こる。」

効率主義によって上記のような“不自然”な農法が一般的になる中、土壌細菌の力を利用し、不耕起の自然農法を始めた男が語る。
P330
「虫食いが無農薬の証だなんて言うのは都会の素人だぜ」
 剛は胸を反らせた。
「ちゃんとした作り方をすれば、植物というのは、自分で虫除けをするものなんだ。だってそうだろう。動物と違って足や羽を生やして逃げられないんだから。蝋のような物質で葉を覆ったり、虫の嫌いな物質を出したりして。農薬をかけたり、化学肥料を突っ込んだりしているうちに植物は生命力を失う。種苗会社はそうしないと育たない品種を作り出して、農薬や化学肥料とマッチポンプで儲ける。」


自然をあなどってはいけない。自然をコントロールできるという過信が、人間に災禍をもたらす。そんな気がする。

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コメント

>農薬や化学肥料とマッチポンプで儲ける…

金もうけしたい!!dash
っちゅうチップがここ100年くらいで
人間の脳みそに埋め込まれてるのよ。thunder
メラメラ暴走して、トンでもない化け物の塊になっちまう。

原発…だってさあ~
利権がらみで…止められないのさ、きっと。

世界の2パーセントの億万長者が牛耳る
地上の螺苦園full

投稿: オバカッチョ | 2013年6月13日 (木) 16:01

ホントに、そうじゃないかと思います。
だっておかしいですよね。

こんなに人の命・・のみならず、人々の健康や子孫への影響、そして人間以外のイキモノをも軽視することばかり。
原発も、遺伝子組み換えも、食品添加物も、抗生物質漬けの家畜も… みんな根っこは同じな気がする。

そこまでおかしいアレコレがまかり通ってるのは、人類が自滅へ向かうプログラムが発動しているか、何かおかしなものに支配されているとしか。

投稿: にゃみにゃみ。 | 2013年6月13日 (木) 20:19

>だっておかしいですよね…
>何かおかしなものに支配されているとしか…

おかしなものに支配される弱さも
おかしなものを跳ね除ける強さも
持ってる気がするんだよね、人間って。

神様じゃあないからね。
最初から気がつけない。

今まで2%の魔物に取り付かれた人間に対して
内在する弥勒菩薩が発動した人間が3%に達したら
ゴロンとひっくり返る…過渡期だよね

あきらめないで
もち続けようよ、僕達の弥勒


投稿: オバカッチョ | 2013年6月15日 (土) 10:07

世の中がどうであれ、
隣人がどうであれ、
邪悪な存在や思いやりのない存在が身近にあっても、
自分がともかく誠実に、自分のなすべきわざをなす。

まずはそこからかと思ってます。

投稿: にゃみにゃみ。 | 2013年6月15日 (土) 16:14

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