『(株)貧困大国アメリカ 』
「自由の国」というイメージがあるアメリカ。しかし、かつての「善きアメリカ」はどこへ…。努力すれば報われるという「アメリカン・ドリーム」は過去の幻想となり、1%の富裕層がマスコミと政府を意のままに動かし、99%から搾取しつくすというブラックな構造になっている。
自国のみならず、戦争や紛争、ときには自然災害をきっかけにして他国に「民主主義」「強い農業」「財政再建」「人道支援」などを理由に介入。種苗会社が確実に儲かるGM(遺伝子組換)作物を巧妙に持ち込み、農地集約・大規模栽培を導入させる。地域で伝統的に作られてきた固有種も伝統農法もすべて消滅、在来農業は壊滅して、農民は借金まみれで身動きができなくなる。
また、市場原理が入るべきではない領域、福祉や教育、公共サービスなどにも、圧倒的資金力によって政治を動かすことで介入。規制緩和、民営化、垂直統合、政府・企業間の回転ドア、ALEC…。
資本主義とグローバリゼーションが結びついて、統治政治から金権政治へと転換してしまった“貧困大国”の実態を、食卓、街、政治、司法、メディアなどの面から解説。まさに“驚愕の事態”が進行してしまっているわけだが、TPPなどを通して、世界中がそのブラックな状況が広がっていく。日本もまた例外ではない。自民圧勝でTPPまっしぐら、なこの国は、「美しい国」ではなく、(株)貧困小国へと着実に向かっているのだろう。
『(株)貧困大国アメリカ 』
堤未果 著
岩波新書
2013/06/28 発行
「あとがき」から抜粋
経済が、すさまじい勢いで人類史のしくみを動かしている。
『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波新書、二〇〇八年)で描いたブッシュ政権の政策は、市場こそが経済を繁栄させるというフリードマン理論がベースになっていた。政府機能は小さければ小さいほどいいとして規制緩和を進め、教育や災害、軍隊や諜報機関など、あらゆる国家機能を次々に市場化していくやり方だ。
だが、「経済徴兵制」が支えた二つの戦争で急上昇した戦費と企業減税で、国内の格差が一気に拡大、さらに世界中を巻き込んだアメリカ発金融危機に、レーガン政権以降の新自由主義万能説への批判が高まった。不信感は二〇〇八年の政権交代につながり、「チェンジ」を掲げるオバマ政権下では、経済政策の軸を市場に委ねる「小さな政府」から、政府主導で経済再建を目指す「大きな政府」へと移っていく。
『ルポ貧困大国アメリカⅡ」(同右、二〇一〇年)のオバマ政権では、国民を監視する政府権限が真っ先に強化された。巨額の税金が大企業やウォール街に流れる一方で、公務員の行動は管理され、SNAP人口は拡大し、無保険者には民間医療保険加入を義務づける法案が成立した。
人々は今、首をかしげている。オバマ政権が大きな政府であれば、なぜ二極化はますます加速しているのだろう。株価や雇用は回復したはずなのに貧困は拡大を続け、医療、教育、年金、食の安全、社会保障など、かつて国家が提供していた最低限の基本サービスが、手の届かない「ぜいたく品」になってしまった理由について。かつて「善きアメリカ」を支えていた中流層や、努力すれば報われるという、「アメリカンドリーム」は、いったいどこに消えたのか。
民主党が批判した「ブッシュの新自由主義」と、共和党が批判する「オバマの社会主義」。
商業マスコミが差し出す一見分かりやすいこの構図は、過去三〇年で変質したアメリカの実体経済についての疑問には、決して答えてくれないだろう。
貧困は「結果」だ。
現象だけでなくその根幹にある原因を探っていくと、いまのアメリカの実体経済が、世界各地で起きている事象の縮図であることが分かる。
経済界に後押しされたアメリカ政府が自国民にしていることは、TPPなどの国際条約を通して、次は日本や世界各国にやってくるだろう。
二〇一三年二月二八日。安倍晋三首相は、所信表明演説の中で明言した。
「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します」
いま世界で進行している出来事は、単なる新自由主義や社会主義を超えた、ポスト資本主義の新しい枠組み、「コーポラティズム」(政治と企業の癒着主義)にほかならない。
グローバリゼーションと技術革命によって、世界中の企業は国境を越えて拡大するようになった。価格競争のなかで効率化が進み、株主、経営者、仕入れ先、生産者、販売先、労働力、特許、消費者、税金対策用本社機能にいたるまで、あらゆるものが多国籍化されてゆく。流動化した雇用が途上国の人件費を上げ、先進国の賃金は下降して南北格差が縮小。その結果、無国籍化した顔のない「1%」とその他「99%」という二極化が、いま世界中に広がっているのだ。
巨大化して法の縛りが邪魔になった多国籍企業は、やがて効率化と拝金主義を公共に持ち込み、国民の税金である公共予算を民間企業に移譲する新しい形態へと進化した。ロビイスト集団が、クライアントである食産複合体、医産複合体、軍産複合体、刑産複合体、教産複合体、石油、メディア、金融などの業界代理として政府関係者に働きかけ、献金や天下りと引きかえに、企業寄りの法改正で、“障害”を取り除いてゆく。
コーポラティズムの最大の特徴は、国民の主権が軍事力や暴力ではなく、不適切な形で政治と癒着した企業群によって、合法的に奪われることだろう。
本シリーズに登場する〈独占禁止法〉〈グラススティーガル法〉〈消費者保護法改正〉〈落ちこぼれゼロ法〉〈農業法〉〈医療保険適正価格法〉〈モンサント保護法〉といったこの間の法改正を見るとよくわかる。これらが実施されるたびに本来の国家機能は解体され、国民の選択肢が奪われてきたからあだ。
企業によるイメージ戦略は、美しい名称をつけることによって、公益と逆行する法律内容を国民の目から隠している。
(略)
食、教育、医療、暮らし。この世に生まれ、働き、人とつながり、誰かを愛し、家族をいつくしみ、自然と共生し、文化や伝統、いのちに感謝し、次の世代にバトンを渡す。そんなごく当たり前の、人間らしい生き方をすると決めた「99%」の意思は、欲でつながる「1%」と同じように、国境を越えてつながっていく。
意思を持つ「個のグローバリゼーション」は、私たちの主権を取り戻すための、強力な力となるだろう。
(略)
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コメント
>この世に生まれ、働き、人とつながり、誰かを愛し、家族をいつくしみ、自然と共生し、文化や伝統、いのちに感謝し、次の世代にバトンを渡す…
地球の5%の人達が、
お花畑の赤頭巾ちゃんから目覚め…
個々の内在する良心を発動すると…変わって行く
欲我の3%を凌駕する。
(産業革命以来…脈々と続く…悪の枢軸」)
投稿: オバカッチョ | 2013年7月24日 (水) 21:41
ホントだ。
もう少しだけ、お花畑の夢から覚めると、
ヨノナカ変わるかも。
そうするにはどうすれば???って、
今日山の上で、バリスタさんとお話ししてたのだけど。
投稿: にゃみ | 2013年7月24日 (水) 22:50
残念ながら…
マニュアルもないし~
オールマイティの特効薬はないのさ。
その都度…
縁あることがらに
もんどりうって自らの役割を探していくしかない。
一番大事なことは…
お花畑にいる自分に気がつくことが大切なんだ。
それに気がつくだけで…せき止められていた水の流れが大きく動く。
最近の東京地方は
また空気が“棘・棘”しているし…
異臭もしている。
強欲まみれの強いけだものに
理不尽に痛めつけられた弱い人たち…
この構図はどこにでも…
僕たちの・すぐ隣に・存在する。
投稿: オバカッチョ | 2013年7月26日 (金) 10:37
ホントに理不尽なことばかりが横行するけれど、
無邪気に夢見る赤ずきんちゃんたちが覚醒し、
身の回りのお花畑のきな臭さにふと気づき、
ほんのちょっと、自分の未来は大丈夫?って考え始めれば…
きっと未来は変えられる。
…そう思いたい。少なくとも自分の役割を見つけて、
よき働きをするもの、になりたい。
投稿: にゃみ | 2013年7月26日 (金) 10:47
>少なくとも自分の役割を見つけて…
もう、やってるじゃない…
こうやって 発信してる!
>自分の未来は大丈夫?って…
みんなに投げかけてる…
僕のたわごとも拾ってくれてる(笑)
投稿: オバカッチョ | 2013年7月26日 (金) 16:08
ごまめのはぎしり…
でもしないよりはまし。
そう思ってます。
地道にいっぽいっぽ。
投稿: にゃみ | 2013年7月27日 (土) 07:47
>ごまめのはぎしり…
でもしないよりはまし…
僕も自分なりに…って
いつもそう思ってる…
自己満足かもしれないけど…とか
最近…聞こえてくるんだよね
そこは違うよ…
へいきさ…気にせず進みなさいよ!とか。
その声に抗うと 迷路に入ってしまう。ははは
投稿: オバカッチョ | 2013年8月 2日 (金) 17:48
導かれているときは、
素直に従えばいいと思います。
熊野の神様に呼ばれたと勝手に思ってるワタシは、
「勝手に熊野エバンジェリスト」してますが、
それもそれ。思い込みでいいのだと思ってます。
善きいとなみを…
愛すべき隣人のために成しうるのならそれは自分の幸せ。
投稿: にゃみ | 2013年8月 2日 (金) 21:07
>愛すべき隣人のために成しうる善きいとなみ…
戦略的鎖国…
そろそろこのこと、真剣に考えなければいけない
多くを持つ国は、持たない国をいじめる
強い国同士は手に余る武器を見せ合い…決して戦わない
泣き叫ぶ弱い子供の後を追いかけまわしいじめぬく。
子供のいじめと原理は同じ。
われわれ人間は
まだこのレベルにしかいない…
世の中を変える5%の良心…そろりそろりとマグマに浸み込みグレンとひっくり返る。
投稿: オバカッチョ | 2013年8月 7日 (水) 13:10
>戦略的鎖国
!!!!!
それはすごいかも!
TPPの真逆。
究極の地産地消、
それ、
アリ!!!かも!!!
じぇじぇじぇー!
投稿: にゃみ | 2013年8月 7日 (水) 22:41