『単純な脳、複雑な「私」』
脳科学の専門家として知られる著者が、出身校で行った連続講義をまとめた一冊。テーマは「心の構造化」で、ここでいう「心」とは「意識と無意識を含めた脳の作用全般」という意味なのだが、“ココロってナニ?”“脳とココロの関連は?”というような、「よくわからん」ことをとても面白い切り口から語ってくれる一冊。
そもそも高校生がターゲットなので、わかりやすさは保証付き。「事実(fact)と真実(truth)は異なる」ということを、脳科学の観点から解説してくれているのがとても面白かった。
『脳はこんなに悩ましい』を読んで、この著者に興味をいだいたのだけど、読んでみてとてもよかったと思える一冊。
『単純な脳、複雑な「私」
または、自分を使い回しながら進化した脳をめぐる4つの講義』
池谷裕二 著
朝日出版社 刊
2009年5月 初版1刷発行
★単純な脳、複雑な「私」 動画特設サイト…ココ!
部分的に抜粋。
(とはいえ、今回じっくり読む暇がなくて、斜め読みの中からなので…後日時間があるときに読み直したい。)
・「単純接触現象」…長時間接しているほど好きになる。…TVCMを回数多く打てる大資本系企業のモノが売れるのはそういう仕組みなんだな。
・「錯誤帰属」…何かの勘違いでも、好感をもった対象にはムリに理由をこじつける。…「反復呈示」で好みが操作され、本人は「自ら好きになった」と思い込む。もちろん広告手法に応用してるよね。選挙活動もね。
・脳は顔に敏感。でも、左半分しか見てない。朝、寝坊して化粧する時間が足りないときは、手抜きしながら全体にするより、左半分に集中する方がいいらしい。池谷先生説なんで責任もてませんが。
・Webで多用される顔文字は、ゲシュタルト群化原理を使ったもの。
・人の記憶はあいまいで、意図的に改変できる。
「記憶は生まれては変わり、生まれては変わる。この行程を繰り返していって、どんどんと変化していく。だから「見た」という感覚がいかに怪しいかよくわかる」
…冤罪ってこうして作られてない?
・「がんばれ!」の効果は絶大。モニターに「握れ」と表示されたらグリップを握るという実験で、「握れ」という表示の前にサブミナル映像で「がんばれ!」を見せると握力が約二倍になるという。
・2つのグループに単純作業をさせる実験で、高い報酬を払うグループと、法外に安い報酬のグループでは、安い方が作業が楽しかったと答える。その理由は、おもしろい作業ではないがわずかな報酬でカラダを動かしている以上、「意外と楽しい」と思い込む。
…脳をだますのは簡単。つまり「洗脳は簡単」ってコトかも。
・「自律」というのは「意思とは無関係に独立して作動している」って意味。つまり「意識的にはコントロールできない」という意味だよね。でも、本当はそうではなくて、自律神経系には意識的なフィードバック機構が備わっていない、だからコントロールできないだけのことだ。
…座禅とかヨガとか修行とか、が目指しているのはそこなんじゃないのか?
ともあれ、スリリングで面白い一冊。買っちゃおかな。手元に置く価値ありだと思う。
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