『残り全部バケーション』
「実はお父さん、浮気をしていました」と食卓で、わたしと向かい合っている父が言った。桜の木を折りました!と告白する少年さながらの爽やかさだ。「相手は、会社の事務の子で、二十九歳の独身です」
という、書き出しで始まる短編集。父の浮気が原因で両親は離婚、高校生の娘は学校の寮に入ることになり、一家三人は“解散”。そのとき、父のPHSにメールが着信。
「適番でメールしてみました。友達になろうよ、ドライブとか食事とか」
『残り全部バケーション』
伊坂幸太郎 著
集英社 刊
2012年12月 初版発行
★集英社WEB文芸RENZABURO…残り全部バケーション
当たり屋とか、恐喝とか、脅迫とか、犯罪の下請け的な裏稼業で生きている「岡田」が、ちょっとした“事情”でテキトーな番号に送信したメールを受け取った離散直前の一家三人とドライブにでかけるコトになったという、表題作「残り全部バケーション」、父親から虐待を受けている子供を奇天烈な方法で救おうとする「タキオン作戦」など、ちょっとずつ登場人物が絡み合っている短編5作が収録されている。
アウトローな「岡田」「溝口」などの登場人物も、彼らと関わることになる人々も、なんだかトボケた感じで、いい味出してる。まっとうでない人ばかりが出てくるし、突拍子もないストーリーなんだけど、そのとぼけ方がなんとも楽しい。
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