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『もうひとつの核なき世界 真のCHANGEは日本が起こす』

「核なき世界」をめざすと訴え(※)、ノーベル平和賞を受賞したKaku_nakiオバマ米大統領を“唯一の被爆国”である日本人は絶賛したが…
米国務省が発表した核兵器在庫数は5113個。劣化ウラン弾で被爆してしまったイラク・アフガンからの帰還兵を襲う悲劇的な末路。そして、軍縮ではなく前政権を上回る軍事予算を計上、戦争を拡大させるオバマ政権。報道されない「核なき世界」の裏の真実を描くルポ。
核兵器、原発、劣化ウラン弾、放射能と放射能が人体にもたらす影響についてなどが、わかりやすく解説されている。
      ※2009年4月「プラハ演説」



『もうひとつの核なき世界 真のCHANGEは日本が起こす』
堤未果 著
小学館 刊
2010年12月 初版発行

「アメリカの国民の大半は、第二次世界大戦についてほとんど何も知らなかった。原爆を誰が誰の上に落としたかさえ知らない若者もいる。ロシアが中国に落としたと思い込んでいる者もいれば、日本が真珠湾で落としたなどと勘違いしている者までいるのです。信じられますか? 私は自分自身に向かってこうつぶやきました。いったいこれを危機と呼ばなければ、何を危機と呼ぶのだろう? と」
(P88より 米国立スミソニアン宇宙航空博物館 マーティン・ハーウィット館長)
 ※肩書1995年当時 同氏の著書『An Exhibit Denied』(邦題『拒絶された原爆展』)

■同じ著者の作品の極にゃみ的レビュー
『社会の真実の見つけかた』
『(株)貧困大国アメリカ 』

以下、さくっと抜粋。

「プロローグ」より
 世界には、<絶対主義>に隠れてしまうあいまいさがある。
 二〇〇九年四月にアメリカのオバマ大統領がプラハで行った演説で触れた、<核なき世界>。それはひとつの問いとなり、瞬く間に国際メディアの波に乗り、地球を駆けめぐり、前年の大統領選挙で彼が<チェンジ>というスローガンを掲げたときと同じように、受け手によって様々な角度から解釈されることになる。
 被爆地では人々が、半世紀以上も続く<原子爆弾>による苦しみの先にようやく見えた光に顔を向け、ポリネシアの小さな島々では住民たちが、大国が繰り返し行った実験で降り注ぐ死の灰が破壊した環境と、水の中に沈みゆく地平線、赤ん坊たちのねじれた手足を思うだろう。
 守られるはずの社会の中で孤立させられ、次々に自らの命を絶つ帰還兵たちは、抗がん剤でぼんやりとかすむ頭で、砂漠の砂嵐の中いつの間にか体に入り込んだ得体のしれない猛毒の微粒子をイメージしたかもしれない。
 職を失うリスクにさらされ沈黙を強いられた科学者たちは、石油をめぐり繰り返される紛争についての不都合な真実が、ますます別なものにとって代わられる不安を拡大させるだろう。絶望的な状況の中で、日々無力感と戦うコソボやイラクの医師たちは、自分たちを蝕むものの正体が、<核なき世界>の削減リストから外されていることを知っている。
 西側に敵視されてきた小国では、これから必要性が増すだろう、身を守るカードを増やす戦略が焦燥感とともに会議のテーブルに載せられる。ある種の国々にとって、<核なき世界>構想はむしろ警戒すべき対象だからだ。
 エネルギー業界のビジネスマンは、フル回転する頭の中で<核なき世界>とは全く切り離された、拡大する原発ラッシュに乗るための計算を続けている。環境活動家は<核なき世界>をひとつのきっかけとしてとらえるだろう。「これは人々にとって、石油依存のライフスタイルを見直すチャンスになるはずだ」。
 そして子どもたちはごく自然に、浮かんでくる疑問を口にする。
「いったい今、世界に核兵器はいくつあるの?」

 それは、私自身への問いでもあった。


ピッツバーグ医科大学の放射線医学名誉教授であり、低レベル放射線研究の第一人者であるアーネスト・J・スターングラス博士は放射能を、『見えない、臭わない、味もない、理想的な毒』と呼ぶ。なんの症状もなく、何年も何十年も経ってからがんが発症するが、”そのがんの原因が何年も前の放射能であった”と確定的に証明することは非常に難しいというのだ。

 国立環境研究所の元主任研究員である功刀正行博士は、核兵器の存在は単なる軍事的問題を遙かに超えていると指摘する。
「核兵器そのものに、どうやっても自然に戻せない物質が使用されているのが問題だ。<核なき世界>だけを唱えるのではなく、日本国内にある原発や再処理工場も含めて相対的にとらえるべきだ。放射性廃棄物は核兵器解体だけでなく、原発の解体をはじめ様々な場所で生み出されていることを無視してはならない。
問われているのは<核兵器>よりも、循環せず生命体に深刻な被害をもたらすエネルギーに依存し続ける、ライフスタイルのほうだからだ」

 ニューヨーク州立大学で経済学を専攻するリチャード・クラウチは、<核なき世界>について昂揚する被爆地からの声を不思議がる。
「日本は被爆国ということでずっと被爆の恐ろしさなどを訴えていますが、その一方で政府は原発関連の受注に力を入れている。日本国内にも五十五基の原発がある。原発に関しては日本の技術は世界一ですからよくわかりますが、<核>と<原子力>、それに<核燃料>といったものはそれぞれ全く別の次元で考えられているんですか?核燃料なんてウランを加工すれば簡単にできる。原子炉内で核弾頭用プルトニウムを作ることなどいつでもできるんですよ」

 一九五三年に、当時のアイゼンハワー米国大統領が<平和のための原子力(Atoms for Peace)>を国連の演説で掲げ、IAEAと発電用原子炉が登場した。被爆国として廃絶を訴え続けてきた<核>と、日常生活の中で使うエネルギーとして依存する<原子力>。リチャードの言うように、この二つはたとえ言葉で切り離したとしても<核なき世界>を通して未来を見るときには表裏一体の存在だ。
二〇〇三年に「米科学国際安全保障研究所」(ISIS)が発表したデータによると、核兵器の原料となる高濃縮ウランとプルトニウムの二〇〇三年時点での総量は全世界で約三千七百三十トンに上る、うちプルトニウムについては、核兵器二十二万五千個以上に相当する約千八百三十トンが三十五ヵ国に存在、日本は百五十一・六˞百五十三・六トンと非核保有国の中で最大だった。日本はさらに、民生用ながら短期間で兵器転用が可能な分離プルトニウムも非核国で最大の約四十一トンを保有していることが公表されている。

「核の脅威と原発がもたらす恩恵は切り離せません」
前述したブラウシェアズ財団のシリンシオーネ氏は、独立系ラジオ番組のインタビューの中でこう語っている。
「だが原発には未解決の問題が四つある。第一に費用が莫大なこと、第二に事故が起きた場合の危険性が大きすぎること、第三に廃棄物処理の問題、最後に拡散を防げないということです。原発の問題は原子炉そのものではなく、そこを出入りする物質のほうです」

「チェルノブイリのあの事故は、世界が原子力というものを考え直す大きなきっかけになるべきでした」
そう言うのはロシア出身でカリフォルニア州サンタクルズ在住のジャーナリストであるジプシー・トーブだ。
「欧州の放射能研究機関であるECRR(European Committee on Radiation Risk)がチェルノブイリ事故の二十周年に発表した報告書の中で、科学者たちはあの事故で漏れた低レベル放射線による深刻な後遺症について警告しています。
人間や植物への被害の実態とともに彼らが強調しているのは、IAEAや国連エネルギー省などの国際機関がこの危機を全く真剣に受け止めていないことへの抗議です」
「被害を過小評価している国際機関とは?」
「例えばWHO、UNSCEAR(国連放射線影響科学委員会)、 IAEA、 ICRP(国際放射線防護委員会)といった機関ですね。国連系の原子力組織だけじゃなく、原子力保有国の政府もみな同じです。あなたたち日本人も、そろそろ国連の言うことをすべて鵜呑みにするのをやめたほうがいい。ECRRの言う放射能の健康被害など、はなから相手にされていないのです。 WHOのスタッフの一人は私にこう言いました。「事故により出ている放射線は人体への許容範囲レベルだ。問題はない」。まるで私の親族があの事故の半年後に白血病で亡くなったのは、偶然だとでも言うように。
科学者たちはあの事故現場で働いていた作業員のうち、すでに放射能の深刻な健康被害によって亡くなっている人が三万人、他にも間接的にがんで死んだ人が百万人いると報告しているのです」
ECRRの報告書にはさらに<今後五億人が低レベル放射線の影響を百年間受け続ける>という予測が書かれている。

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コメント

>『見えない、臭わない、味もない、理想的な毒』…
>今後五億人が低レベル放射線の影響を百年間受け続ける

想定できる環境破壊から地球を守る事ができない

身近な婦女子さえ、なんちゃってクライマーオヤジの毒牙から守れなかった…

一体守れるのかな、僕達の地球。

投稿: オバカッチョ | 2013年8月20日 (火) 15:48

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