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『標的の村』

日本におけるアメリカ軍基地・専用施設の74%が密集する沖縄。Hyoteki_mura_268年前の戦争以来27年間に渡って占領され、その後も強制的に土地を奪われたまま、今なお先祖代々の墓にも行けないという住民もいる。さらに、米兵による暴行事件が頻発するなど、県民が強いられている犠牲は大きい。

自然豊かで美しいやんばるの村、東村(ひがしそん)高江地区。米海兵隊唯一の“ジャングル訓練場”「北部訓練場」と隣り合わせで、米兵によるサバイバル訓練やヘリの飛行訓練が住居のすぐそばで行われている。
その上、地区を取り囲むように「オスプレイ」着陸帯が建設されることに。“標的の村”そのものにされた高江の住民たちは反対運動に立ち上がった。そして、昨年9月のオスプレイ強硬配備の前夜、ついに爆発した沖縄の人々の怒り…
報道陣すら強制排除しようとした状況を取材した迫力のドキュメンタリー。この怒りは、感染します。観よ!観て、怒れ!

『標的の村』公式サイト

大阪は、第七藝術劇場にて9月27日まで、
神戸は神戸アートビレッジセンターにて9月7日~。

「SACO合意」に基づき、約4000ヘクタールの土地が返還されるのに伴って、返還部分にあるヘリパッドのうちの6カ所が高江地区を囲むように新設されることになった。まさに住民が暮らす家並みを標的に想定しているとしか思えない配置。それまでも、住居のすぐ脇の茂みから武装した米兵が飛び出して来たり、昼夜関係なく繰り返される飛行訓練など、平和に暮らせる環境とは言い難い状況があった。

ヘリパッド新設に関して行政に説明を求めても納得のゆく回答が得られなかった高江地区の住民たちは、やむを得ず6年間に渡って訓練場のゲート前に「座りこみ」をしてきた。納得のいく説明を求めて抗議を続けた彼らを、あろうことか国は「通行妨害」で訴えた。反対運動を委縮させるためのSLAPP裁判(恫喝訴訟)だ。

じつは1960年代、この北部訓練場内に「ベトナム村」という訓練施設が設置されて、現地そっくりの村落が再現されたばかりか、住民たちが「南ベトナム人」の役で訓練に協力させられていた実態があった。米軍撮影の映像資料によれば、スゲ笠のようなものを被って黒い服を着た「住民」が米兵に倒され、身体検査を受けるというシミュレーション訓練で、乳幼児やその母なども含む住民たちが駆り出されたという。枯葉剤が撒かれたという証言もある。

事故が多発して危険な新型輸送機「オスプレイ」の配備に反対して10万人が結集した昨年9月の県民大会の直後、政府は電話一本で県に配備決定を通達。「いつなんどき、空からオスプレイが墜落してくるか分からない中で生活することは決して正常ではない」という沖縄県民の声は黙殺された。

そして9月29日。強硬配備の前夜、台風17号の暴風の中、人々はアメリカ軍普天間基地ゲート前に集結。強制排除しようとする警察ともみ合いながらも、22時間にわたって基地を完全封鎖。市民による基地を完全封鎖など、前代未聞の大ニュースなのだが、本土の報道機関はまったくこれを報道しなかった。
沖縄戦や米軍統治下の苦しみを知る老人たちも、幼い子供の手を引いた父母も、身を投げ出して封鎖に加わった。警官に「同じ沖縄人として気持ちがわかるでしょう。今すぐ帰りなさい」と涙ながらに訴える市民たち…

これらの一部始終を取材した琉球朝日放送の報道クルーによる迫真の映像。遠い外国のことではない、同じ国の中で起こっている現実を、同じ日本人として、知るべきだと思う。

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