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『ここに神戸がある』Ⅱ 百万ドルの夜景

神戸のタウン誌「月刊神戸っ子」発行の『ここに神戸がある』巻頭、Dsc01865カラー口絵付「神戸の中の情景」で司馬遼太郎さんが六甲山上からの夜景について書いておられる。口絵は須田剋太氏で、なんとも贅沢な企画。40字×13行の短いエッセイなので、引用してみる。

 どうも「百万ドルの夜景」などという通称は、ことばとして即物的で、新聞の見出しふうで、神戸の人たちの洗練された感覚の反映であるとはとても思えない。おそらく大正の終りごろ、よそから遊びにきた人が、この光景におどろき、即席観光屋の気分になって、こういう駄洒落にもならない言葉を発したのがその後、六甲山に立って夜景を見るひとびとに継承されて行ったのに違いない。

 日本へやってくるフランス人が、機上から日本の都会の電光のかがやきを見て、なんと日本人は電力を浪費することに鈍感なのかと驚くらしいが、神戸の場合ばかりは許されていいと彼等は言うらしい。
 六甲の樹間ごしにこの夜景を見おろすと、足もとの山麓の近景は暗く、中景をなす帯状の町は天の無数の星が落ちてきたかのように一帯にかがやき、遠景は海になって、再びくろずみ、しかも一面の黒ずみではなく停泊中の舷灯やマストの灯が互いにほどのよい間隔を置いてちらばっている。その光と影の構成のみごとさは、人工が天工に質変化する古代美にどこか匂いが似通っている。

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