『原子力ムラの陰謀 機密ファイルが暴く闇』
ウランを産する「人形峠」で実際に行われたというありえないような「住民思想調査」の実態、まるでスパイ映画のような、動燃の裏工作部隊「K機関」について、組織ぐるみでの選挙工作、都合の悪い報道をしたNHKに対して行った「やらせ抗議」の手口、プルトニウム輸送船「あかつき丸」の日米密約…などなど、とてもじゃないが、近代民主主義国家を標榜する現代日本での現実とは思えないような驚愕すべき内容が証拠文書と共に明らかにされている。「洗脳」とか「工作」と言った、一般社会では考えられないようなことがこれでもかと暴露された、戦慄のドキュメンタリー。
『原子力ムラの陰謀 機密ファイルが暴く闇』
今西 憲之/週刊朝日取材班 著
朝日新聞出版 刊
2013年8月 初版発行
★参考:座間宮ガレイ氏
絶対に『原子力ムラの陰謀: 機密ファイルが暴く闇』を読め! 自殺した西村氏の遺書が「改ざん」その遺書すら「偽造」の可能性!
著者・今西憲之さんインタビュー動画もアリ。
この本で暴かれた衝撃の「機密」の証拠となる“文書”を残したのは、高速増殖炉「もんじゅ」がナトリウム漏れ事故を起こした後、「想像を超えた事故隠し」を指摘されて糾弾された動燃で、内部調査を命じられ、関係者から事情聴取を行った西村氏。
「ビデオ隠し」の一件で記者会見を行った翌朝に変死体となって発見されたが、遺書には不自然な点が多く、現場にあるはずの重要な文書などが消失するなど、疑惑だらけの“謎の死”。故人が几帳面に残していた膨大な文書を、著者らがひとつひとつ読み解き、関係者に取材もした上で、『週刊朝日』2013年3月15日号~4月19日号までの6回シリーズで連載記事にしたものに大幅に加筆してまとめた一冊。“原子力ムラ”の恐ろしさがリアルに書かれている。一人でも多くの人に読んでもらえたらと思う。
どの項目も驚くべき内容だが、第1章で紹介されている「人形峠」の件を例に挙げて簡単に紹介してみよう。
岡山県と鳥取県の県境に位置する人形峠では、日本における原子力産業の黎明期にあたる1955年に天然ウランの鉱床が発見され、翌年から採掘がはじまった。まだ放射能の危険性が一般に知られていなかったこともあり、地元はにわか景気に沸くが、ほどなく品質的に採算ベースに合わないことがわかって閉山に。10年ほど露天掘りが続けられたため、放射線量の高い残土が野ざらしのまま放置されていることが後になって問題に。
採掘を行った動燃は「捨石(ウラン残土)から出ているのは自然の放射能で害はない」と危険性を認めず、撤去しない方針だったため、地元住民と対立。反対運動をしていた住民を懐柔するため、ありとあらゆる手を使って「工作」を行った。地区住民のリストを作り、職業や人脈、家族関係、地権の有無、動燃に対する考え方などの素性調査を実施。接待、買収などに応じなければ村八分作戦を取ったり、勤務先を通じて圧力をかけたり、議員を使ったり、なりふり構わぬ工作を行ったというのだ。
ちなみに、この人形峠の現地調査を行った京都大学原子炉実験所・小出裕章助教授は、次のようにコメントを寄せている。
「私は原子力発電による環境への汚染や、“核のゴミ”の問題などを研究してきました。だが、原子力発電をするには、そもそもウランを掘ることから始めなければならない。その段階から放射能汚染はあるのだ、もっと高い汚染がウラン鉱山で生じるのだと人形峠で気がつき、自分のおろかさを痛感しました。原発がなければ、ウランを掘る必要はないのです。被爆を防ぐことができるのです。いま日本のウランは100%海外からの輸入です。海外ではウラン残土が野ざらしのまま、被爆が拡大しています。ウラン238の半減期は約43億年。人類の被爆を考えると、ウランが最悪の放射性物質なのです」
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