『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』
世界一豊かな“アメリカンドリーム”の国、だったのは過去の話で、今現在はとてつもない格差社会になってしまっているアメリカ。
1%の富裕層が富を独占し、中流階級という幻想は消滅し、多くの貧困層という弱者で構成されている“末期的”大国。
そんなアメリカで、不正と戦う“弱者”たちの姿を取材した渾身のレポート。未成年者を食い物にする軍のリクルートに反対する若者たち、大事な子どもを戦死させられ、反戦運動に身を投じた母親たち、そしてマイノリティの人々…
絶望的な状況の中で、ひそやかに、しかし着実に自分たちで未来を切り開こうとしている人々がいる。社会を変えるために声を上げていくことの大切さがよくわかる一冊。必読です。
『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命―なぜあの国にまだ希望があるのか』
堤未果 著
新潮文庫 刊(2010年11月)
※初出は『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』海鳴社(2006)
★同じ著者の本
『(株)貧困大国アメリカ 』
『政府は必ず嘘をつく』
『社会の真実の見つけかた』
『もうひとつの核なき世界 真のCHANGEは日本が起こす』
3100万人の国民が飢えていて、国民健康保険制度がないため4500万人が医療保険に入れず、病気やけがをすると莫大な医療費の支払いが原因で貧困層に没落。そして国民の8人に1人が貧困レベル以下(2人家族で年収140万円以下)にあり、貧困児童数は先進国でもっとも多い1300万人。350万人のホームレスがいて、そのうち50万人が退役軍人。選挙では不正が横行し、一日あたり77人の乳児が死亡し、13人の児童が銃で命を落としている国。
学歴社会なので、大学を出ていなければ時給5ドルのファストフードチェーンのバイトにしか就けないので、貧困家庭の子供たちは「大学に進学できる」という甘言に乗せられて軍にリクルートされ、兵士として前線へと送られる。ところが、一般的な兵士の給料は年間1万7000ドルから多くて2万ドル。そこから学資の積立金、生命保険を天引きされ、命を守るための防弾チョッキさえローンで個人購入しなければならないという劣悪な待遇で、運が悪ければ進学どころか戦死し、死なないまでも重度の障害を負ったり、運良く生き残れても多くの者がPTSDに苦しむ。アルコール依存症・精神病・麻薬・犯罪…と退役軍人の末路は悲惨。
(文庫版あとがき から)
戦争を続ければ続ける程、国内の教育や医療、その他さまざまな社会保障予算は削られる。アメリカ国内の失業率が猛スピードで上昇している原因は、2008年秋に起きたリーマンショックだけでは決してないのだ。
いま、“戦争のできる”国にこの国を仕立てようとしている現政権。
憲法9条を守り、武器輸出を止め、集団的自衛権などという詭弁を弄することなく、平和維持を第一義とする国でいなければ。
貧困大国の衰退を後追いするようなことだけは決してしてはなるまい。
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