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『日々の非常口』

「日本人より日本通の詩人」アーサー・ビナードさんのエッセイ集。Hibino_hijo朝日新聞の人気連載コラムが2006年に単行本化され、3年後に文庫本となって発行されたもの。
泥沼はどこだ 言葉を疑い、言葉でたたかう』でその洞察の深さに感心したのだが、このエッセイもまた洒脱でありながら深みのある内容のものが多かった。

『日々の非常口』
アーサー・ビナード 著
新潮文庫 
2009年8月 初版発行

アーサー・ビナードの日本語ハラゴナシ

「水まわり」から抜粋。

 自転車に乗って都内を走り回っていると、のどが渇く。曇り日なら、ちょっとした遠出で一リットルの水が必要だが、炎天下となればその倍はいる。水筒のかわりにペットボトルを繰り返し再使用し、水道水を入れてリュックに忍ばせる。凸凹した道を行くときは、背中のほうからチャポチャポチャポチャポ音が聞こえてくる。
(中略)
 排気ガスを人一倍吸っても、自分から排気ガスを出したくないと覚悟を決め、ペダルこぎこぎ生きている。そんなぼくが、もしミネラルウォーターだのナチュラル・ウォーターだのボトルド・ウォーターを飲んでいるとなったら、それは愚の骨頂というほかない。銭を出して買う水の類いは、みなトラックで運ばれて消費者の手に届く。そして僕の肺をおかしているのもトラックの排気ガスだ。従って「ウォーター」を飲むということは、曲りなりの自殺行為だ。それに、排気ガスのフィルターと化している自転車野郎には、気取ってピュアな天然水を求める資格などない。
(中略)
 蛇口から出る水をそのまま飲めるのが、なによりの贅沢だ。

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