『憲法の空語を充たすために』
気鋭の論客として知られるウチダ先生による憲法論。今年の5月3日、憲法記念日に神戸で行われた、兵庫県憲法会議主催の集会での講演をまとめたもの。
著者は「まえがき」にこう書いている。
「私は護憲の立場にあるものとして、日本の民主制と憲法の本質的脆弱性について深く考えるべきときが来ていると考えています。私たちの国の民主制と平和憲法はこれほどまでに弱いものであった。わずか二回の選挙で連立与党が立法府の機能を事実上停止させ、行政府が決定した事項を「諮問」するだけの装置に変えてしまった。
立法府が機能不全に陥り、行政府が立法府の機能を代行する状態のことを「独裁」と言います。日本はいま民主制から独裁制に移行しつつある。有権者はそれをぼんやり見ている。」
独裁制になりつつあるのを「ぼんやりと見ている」…たしかにそんな感じを受ける。これほどの危機があろうか。
グローバル化と国民国家の解体がこの国を滅ぼす。重要な曲がり角にいる今、一読してほしい一冊。
『憲法の空語を充たすために』
内田樹 著
かもがわ出版
2014年8月15日 初版発行
まずは、著者による「まえがき」だけでも。コチラで読めます↓
『憲法の空語を充たすために』まえがき(内田樹の研究室) …ココ!
ところで、ニュースでも話題になったので記憶に残っている方も少なくないと思うが、5月3日の集会に関して、神戸市と神戸市教育委員会は「後援を拒否」しました。これに関してもしっかりと述べておられます。神戸市の関係者の方はぜひとも読んでいただきたい。
P18
公務員には憲法九条に規定された憲法尊重擁護義務が課されています。
(中略)
その公務員が日本国民であるわれわれが開催した護憲集会について「政治的中立性がない」と判断したということは、理論的には公務員でありながら憲法尊重擁護義務を拒絶したということになる。これはよく考えると憲政史上の一大事件なわけです。
でも、問題はそのことにあるのではありません。
以下はぜひ本書を。辛辣ですが、良書だと思います。
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