『円卓』
映画を先に見てから原作を読むことってあまりないのだが…夏に、もらったチケットで観に行った映画『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』がなかなか面白くて(ロケ地が近所でそれを見たいという理由もあったのだが)、機会があったので原作を読んでみた。
邦画の場合、だいたいは原作を先に読んでいて、映画化されて観に行ってガッカリ、というパターンが多いのだが、この作品は映画が後でもガッカリはしなかったと思う。というか、原作のイメージがそのまま映画になった感じ。
監督さんの解釈で独自ワールドに入ってしまって、原作と似ても似つかぬ作品になってしまうケース(こんなんとか…)もある中、この作品の映画化はかなり原作に忠実であるように感じる。
まぁ何より、ヒロインの芦田愛菜ちゃんがあまりにもハマり役だったってことが大きいかもしれないが。
『円卓』
西 加奈子 著
文春文庫 刊
2013年10月 初版発行(初出は単行本;2011年3月)
小学3年生の主人公、こっこは、平凡を憎み、「こどく」に憧れている。
「だれをもあけることならぬ」と書いたジャポニカの自由帳を何より大事にしていて、気になる言葉に出会うと、強烈な筆圧で書きとめる。
1ページ目に書いてあるのはもちろん「こどく」。
同級生が「ものもらい」で眼帯をして登校してくると、すっかり魅了されて、しっかり「ものもらい」と書き留めたものの、口にすると「もらいもの」になったり、「ものもらいは麦粒腫」と教えられ、「ばくりゅうしゅ」と書いたのが口にするといつのまにか「ふくろくじゅ」になったりもするが、基本的には「言葉」にはとても敏感で、大切にしている。
世間の価値観、ステロタイプとは違うところに価値を感じる主人公が、ヨノナカとかジョーシキとかいうものを、からめとられてしまうのではなく、“学習”していく過程が面白い。そして、吃音の幼馴染、ぽっさんの聡明と純真さがなんともステキだ。言霊のようなもの、が跳梁跋扈している面白い作品。
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