『麴巡礼 おいしい麴と出会う9つの旅』
糀料理研究室「糀園」を主催するイラストレーター、おの みさ氏による“麹愛”が全編に詰め込まれた一冊。新潟の「かんずり」、岩手・遠野の「醪饅頭(さかまんじゅう)」にどぶろく、石川県のふぐの卵巣の糠漬・粕漬やかぶら寿司、宮城の醤油に「あざら」、熊本の赤酒、鹿児島の酒寿司、高知の「碁石茶」、東京都の甘酒、埼玉県の乾燥麹など、日本各地の伝統的な食文化の中から、麹が使われたものをチョイスし、“麹巡礼”と称して取材。
「コージ料理コーナー」として、それらの食材を使ったレシピも紹介している。
知ってるものも知らないものもあるけれど、いずれも興味深い。麹って、日本の食文化では本当に欠かすことのできない重要な要素なのだ。カビだけど。
『麴巡礼 おいしい麴と出会う9つの旅』
おの みさ 著
集英社 刊
2013年4月 初版発行
【新潟県妙高市のかんずり】★越後妙高「かんずり」
昔から、雪に閉ざされる冬の手すさびで、乾燥させた唐辛子をすり鉢ですって粉にし、塩や味噌、酒粕などを混ぜて壺に入れて保存する、それぞれの家の「オラがかんずり」を作っていたとか。寒い季節に里で作るから「寒造里」。ルーツは上杉謙信の兵糧食だとも言われている。
雪が消える頃、唐辛子の栽培を開始。夏の間に3種類の唐辛子を育て、秋に収獲したものを塩漬けに。寒さが厳しい冬に、雪の上に撒く「雪ざらし」を行うことによって塩の角が抜けてマイルドになり、かつ低温のために甘さが増す。
雪ざらしの後、粉にして、柚、塩、麹を混ぜ、3~5年間熟成させる。最後に、熟成容器ごと外の低温で冷やす「寒ざらし」を経て完成。
■かんずりの素麺チャンプルー
素麺2把 かんずり小さじ1 ごま油大さじ2 にんにく1かけ 大葉6枚
・あたためたフライパンにごま油をしき、スライスしたニンニクを弱火でじんわりと過熱し、かんずりも加える。
・茹でた素麺を加えて炒め合わせ、刻んだ大葉をトッピング
■かんずりカルパッチョ
刺身100g かんずり小さじ1 オリーブオイル小さじ1
・かんずりとオリーブオイルを混ぜてそぎ切りにした刺身を和える
・カイワレ大根をあしらい、好みでレモンを絞る
■かんずりチップ
・かんずりを少し水でゆるめて、餃子の皮に塗る
・粉チーズを振って、オーブントースターで焼く
【石川県のふぐの子の糠漬け粕漬け等】
・イワシに塩を振って置くと、汁が出る…「いしる」
・「いしる」を取ったイワシは糠漬けにする…「コンカ(米糠)いわし」
・ふぐの卵巣には猛毒テトロドトキシンがあるが、塩漬けにして半年以上置くと80%くらいの毒が消える
・それをいったん水洗いし、糠と麹を混ぜて樽に詰め、「いしる」をかけて蓋をし、1年半寝かせると毒性が完全に消えて食べられるようになる
【岩手県陸前高田市のヤマニ醤油と周辺の郷土料理あざら】
・1868年創業の老舗醤油蔵ヤマニ醤油は東北大震災のときに蔵が津波に流されたが、かねてより交流のあった同業者、花巻市の佐々長醸造に協力を求め、蔵を借りて製造を再開。後に盛岡に移転。
・「あざら」は、白菜の古漬けを茹でこぼして塩抜きをし、魚のあらで取った汁で煮て、酒粕と白味噌で味をつけた郷土料理。
【岩手県遠野市の醪饅頭・どぶろく】
・1908年創業「まん十や」では、炊いた米に麹と水を混ぜて常温で発酵させた「醪」に小麦粉、砂糖、水、ふくらし粉を加えて作った皮で蒸し饅頭を作っている。
・遠野の民宿「とおの屋 民宿とおの」では、酒米としても飯米としても美味な遠野原産品種「遠野一号」を無農薬有機で自家栽培し、その米で麹を作り、どぶろくを醸している。
【熊本県の赤酒】★瑞鷹
・気温の高い熊本では、冷蔵庫のない時代に、醸した酒の保存性を高めるために灰を使って麹菌を不活性にして酸敗を防ぐ「灰持酒(あくもちざけ)と呼ばれる赤酒を作っていた。
・九州産のうるち米を85~90%精米し(通常の飯米とほぼ同じ)、通常の清酒の倍量の米を使って仕込む「五水」(米十石に対して水五石を使う。通常の酒は米10に対し水10)。米の量が多いため甘くてつまみのいらない酒になる。
・赤酒はみりんや料理酒と違って弱アルカリ性なので、料理に使うと肉や魚がふっくらと柔らかくなり、照りもよく、料理人に愛用されている。
・甘くて安価なので、ご高齢のお嬢様方がナイトキャップにお飲みになったりしている。
■豆腐の味噌漬け
・堅豆腐を殺菌のため蒸して、風に当てて乾かす
・一口大に切って、醪味噌で漬込む
・軍艦巻きのすしのネタ、同量のバターと混ぜて使うなど
【鹿児島県の酒寿司】
・鹿児島の地酒(灰持酒)をご飯にかけて、容器にご飯と具を博多押し(博多帯の模様のように重ねて)にする。
具は味付けをしたさつま揚げや蒲鉾、椎茸、木耳、山菜、三つ葉、刺身など。
・重石をして4~5時間馴染ませ、仕上げに錦糸卵やエビ、刺身などを盛り付け、「追い酒」(酒の味が足りない場合に足す)を添えて供す。
お手軽酒寿司
・ご飯1合を容器に入れ、煮つけた椎茸などの具と交互に重ね、酒50㏄+みりん50㏄を振りかけて、重石をして半日置く。
・茹で海老や錦糸卵を飾って盛り付ける
【高知県の碁石茶】長岡郡大豊町「大豊ゆとりファーム/碁石茶協同組合 小笠原章富さん
・寒暖差が大きく、朝霧が立ち、日照時間の長い吉野川上流の山の斜面が適地。
完全無農薬で栽培した山茶・ヤブキタを年に一度6月頃に枝ごと刈り取り、蒸し桶に詰めて大釜で蒸す
・2時間ほど蒸すと枝から葉が落ちるので、枝は乾かして焚き付けに
・筵の上にふんわりと茶葉を乗せ、上からも筵を被せて発酵させる。45℃くらいになったら足で踏んで空気を抜き、温度を下げる(1回目・麹菌による好気性発酵)
・カビ付けした葉を桶に詰め込み、蒸した時に出た汁をかけて重石を乗せ、発酵させる(2回目・乳酸菌による嫌気性発酵)
・約20日間発酵させ、25cm角に切り出して、別の桶で漬込み、晴天が続く日を選んで厚さ5mm~1cm程度に手で裂いて5日間ほど天日干し
【東京都の甘酒】三河屋綾部商店/天野屋/千年こうじや麻布十番店
【埼玉県の乾燥麹】伊勢惣
生麹は冷蔵庫で1~2週間、冷凍しても2~3か月しかもたないが、乾燥麹は常温で1年もつ。
■ナンプラー麹
250㏄のナンプラーに乾燥麹を100g加え、1日1回かきまぜながら常温で1~2週間置く。
麹の粒が柔らかくなったら冷蔵保存
春雨サラダやエビ焼きそばの味付けに。酢を足してセロリなどの漬物に。
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コメント
chieさん、
そうなんですかー。
chieさんの塩麹漬けシリーズも美味しくて好き。
麹ってエライですよねぇ。
投稿: にゃみ。 | 2015年1月 6日 (火) 18:38
私の塩麹との出会いは、クロワッサンに載ってたおのみささんの記事です~♪
投稿: chie | 2015年1月 6日 (火) 18:19