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「内田樹が語る『街場の戦争論』~グローバリズムと憲法九条~ 」

九条の会.ひがしなだ”9周年記念講演会へ。
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内田樹せんせの講演(『街場の戦争論』)と、泥憲和さんとの対談。これは聞き逃せない。飲み会ブッチした野良チームの皆さんには申し訳なかったけど、告知を見たのが今朝だったので…すまん。

第一部は内田樹さんによる基調講演、第二部はアノ名演説で一躍有名になられた元自衛官・泥 憲和さんとの対談。600人くらい収容できる会場の7割くらいが埋まっていたように思う。憲法問題に関心のある人がたくさんいることに、なんだか少し安心した。

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ラジオパーソナリティ(って変な言葉やね)の小山乃里子さんが進行役。

(内容要約)
※メモ書きを起こしているので、言葉のチョイスや言い回しはご本人の発言と異なる部分があります。

内田氏講演/
 昨年、新たな仕事は一切受けない決意をしたが、その翌日依頼が来て「ご近所だから」とやむなく受けた。地域のつながりを大事にしていて、この地で合氣道の道場を開いて3年半、門人は300名を超えた。

 『街場の戦争論』をお題にいただいたが、あの本はもう古い。読者を脅すくらいのつもりで書いたのに、もはや誰も驚かない。世の中の動きにメディアが追い付かず、何が起きているのかもはやわからなくなっている。それにしてもマスメディアがここまでダメになるとは思ってもいなかった。
 2年ほど前、朝日新聞の紙面審議委員をしていたが、リベラル系だった朝日がいまや政権批判を一切しなくなった。全国紙でそれをしているのは毎日新聞だけ。ある日朝日新聞の”上から目線”な書き方に腹を据えかねてゴミ箱に投げ捨て、毎日新聞に乗り換えた。

 先日の天皇・皇太子の会見も、憲法に触れた内容をメディアは報道しなかったが、今や最大の護憲勢力は皇室とホワイトハウスという不思議なことになっている。
 海外メディアによる安倍政権批判、日本のマスメディア批判はすさまじく、日本人はそれによって自国の実情を知るというおかしな状態に置かれている。
 今、言論の自由が担保された世の中で、これほどメディアが口をつぐんでいるというのは非常に恐ろしいこと。メディアの劣化はとてつもない。
 それはなぜか?NHKでも、新聞社でも、「あるところ」からにらまれる言動をするとキャリアパスが止まってしまう。出世できなくなるから、意向に沿った内容の報道しかしないのだろう。

 朝日新聞を見限って東京新聞に乗り換える層が増えてきているが、新聞というメディアそのものが、ほぼ50代以上のものになっており、ボリュームゾーンは60~70代。若い層はそもそも新聞を取っていない。この流れで行くと、10年後に全国紙というものが存在するのかは疑問。
 今現在、日本の全国紙の発行部数は世界の大手と比較しても格段に多い。世界に類を見ない巨大な知的中産階級が存在するわけだが、このような国はほかにはない。明治維新から150年かけて作り上げられた分厚い中産階級層だが、加齢によってその層は減少に向かい、若年層は貧困化し、この状態は崩壊しつつある。

 TVを見なくなって5年くらいなるが、民放も存続するかどうかわからない。CMを流して無料でコンテンツを提供するというスタイルで運営しているが、特定のジャンルの商品以外はTVCMでは売り上げが伸びないことがアメリカの研究機関により明らかになっている。

 ジャーナリズムが社会的な存在意義を失って、やがてある日、日本のメディアは総崩れになるのではないか。
 Twitterをやっているが、自分のタイムラインには同じ価値観のつぶやきしか流れてこない。ということは、正反対の価値観の人にも同じことが起きているはず。対話が成立しないタコツボ状態になっている。
 コミュニケーションというのは、意見の違う人たちが話をしているうちに、相手の意見によって気づかなかったことに気づいたり、影響を受けたりして、元の考えと少し変化するもの。今は、相手の話の腰を折り、罵詈雑言を浴びせ、相手の話を封じて自分の意見を述べることが多いように感じる。国会中継などは気持ち悪くて見ていられない。
 「対話する能力」が全体的に落ちてきているのではないか。相手をいかにやりこめてその場を制するかだけになっている。

 首相からして、言うことが首尾一貫していない。一国のトップが平気でうそをつき続ける姿に触れていると、国民は壊れてくる。アメリカには、かつて病的な虚言壁のあるマッカーシーという政治家がいて、政府が機能不全に陥るほどの事態となったが、今の日本はそれに似ている。

 アメリかは世界唯一の「福音国家」で、イデオロギーのために作られた国。世界中に「自由と民主主義」を広めようとしている。
 憲法9条は、第1項は世界中の多くの国と同じで、アメリカにとって肝心なのは第2項。表向きは自由と民主主義だが、現実的にはアメリカの国益のため、直近にいる敵国である日本を無力化するという目的がある。

 戦後70年間、平和を維持し、外国人を殺していない軍隊を持つような国はそうない。アメリカ人が起草し、はじめは英文で書かれた憲法であるが、日本人はそれをクレバーに運用し、世界に類を見ない平和と繁栄を成し遂げてきた。
安倍さんの改憲すべきという主張は、「なんとなく」「気分が悪い」というようなもので、冷静に考えれば改憲のメリットは何一つない。

 
内田先生×泥さん対談
※どの発言がどちらかわからない部分があって、間違えているかも。

泥さん
自衛官は、「積極的な服従の習性を養う」という教育を受けている。そのため、海外派兵に関しても否定的な発言をする人はほぼいないが、イラクを経験した人の場合、内心は二度と行きたくないと思っているのでは。政府批判は一切しないが、海外派兵のストレスはすごかった。

内田先生
 
『帰還兵はなぜ自殺するのか』という本を紹介。
戦場ではハイテンションになって、民間人を殺したり、幼児の頭を踏んだりという残虐なことを平気でできるが、帰還して普通の市民生活に戻った時に、その経験を自分の中で処理できず、狂ってしまう。アメリカの陸軍では帰還兵の自殺対策が最大の課題になっており、犯罪に走ったり、自殺する元兵士が非常に多い。

泥さん
スウェーデンでは、中立政策を200年近く続けてきたが、イラク紛争のときに参加した。国民は、自国の兵士が紳士的にふるまうであろうと思っていたが、実際には現地でひどい暴力行為に手を染め、それを笑いながら動画に撮ってユーチューブにアップするなど、人間性を失った行為が見られた。ふつうの感情をシャットアウトしなければ戦場では生き延びることができず、人間性を喪失しないと耐えられない。

現役時代は「命を投げ出して戦う」ということを教育されてきたが、実感としてはなかった。今の現役自衛官に実線経験のある者は存在しない。
ただ、教育方法も進化していて、射撃訓練の的は鉄兜をかぶった人のカタチをしている。
かつて同心円を描いた的を使っていたが、そういう訓練を受けた兵士は実戦で人間を撃てない。射撃率が非常に低いことがわかっていて、第二次世界大戦ではわずか5%くらいにとどまったと言われている。日常的に人のカタチをしたものを撃つ訓練をすることによって、射撃率が上がると考えられている。

旧日本軍の悪口は言うが、自衛隊はそれとはまったく異なる組織で、「戦争をしないために存在する」。
日本で最大規模の反戦団体であるとも言える。
集団的自衛権の問題や秘密保護法に反対する集会に来て、スピーチをするOBもいて、戦争には反対の隊内世論のようなものはある。
ただし、米軍に対しては、友軍という意識があり、反米感情はとくにない。

沖縄の米軍基地に関して言えば、「安全保障のためにはやむを得ない」と思っている人が多いが、嘉手納はともかく、辺野古は抑止力に何の関係もない。
海兵隊の即戦力のために必要だと説明されているが、横須賀と岩国にいる部隊が連動しないと動かせないので、辺野古になぜそこまでこだわるのか意味がわからない。

テロ対策に関しては、警察が対応するのが基本で、機動隊に専門の部隊がいる。それで対処できない事態になれば自衛隊が対応するが、やはり専門部隊が存在する。

安倍首相から「日本」を取り戻せ!!』にわかりやすく書いているので、ぜひ一読いただきたい。表紙には怖い顔の写真が使われており、玄関に貼って置けば魔除けにもなる。

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