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『帰還兵はなぜ自殺するのか』

3月上旬に聴講した『内田樹が語る『街場の戦争論』~グローバリズムと憲法九条~Kikanhei_jisatuのとき話題に上ったことから読んでみた一冊。
が…やはり翻訳モノはニガテ…英語圏の方の文章表現がどうしてもすんなり頭に入ってこなくて、ウルトラ斜め読みになってしまった。
著者はワシントン・ポストの元記者で、イラク戦争の兵士たちを取材するために新聞社を退職、兵士らと1年間生活を共にして『The Good Soldiers』を上梓。帰還後も苦しむ彼らの実態を知り、本人とその家族も含む「戦争の後」を描いたノンフィクション。
集団的自衛権だの、解釈改憲だの、きな臭い局面にあるこの国で、本書の内容はもっと知られるべきだと思う。『亡国の安保政策——安倍政権と「積極的平和主義」の罠』に続いて読んでよかった。

内田樹氏による推薦文を転載。

戦争はときに兵士を高揚させ、ときに兵士たちを奈落に突き落とす。若い兵士たちは心身に負った外傷をかかえて長い余生を過ごすことを強いられる。
その細部について私たち日本人は何も知らない。何も知らないまま戦争を始めようとしている人たちがいる。」


『帰還兵はなぜ自殺するのか』
デイヴィッド・フィンケル 著
古屋 美登里 訳
亜紀書房 刊
2015年2月 初版発行

【参考サイト】
★リテラ「自衛権拡大がもたらすもの…米軍は中東派兵で年250名の自殺者、自衛隊も自殺率14倍に」…ココ!

極にゃみ的に、本文はとても読みにくくて、訳者の「あとがき」が一番すんなり読めた。
あとがきから一部抜粋。

(略)
 イラク戦争は、イラクが大量破壊兵器を隠しているという理由でアメリカがイラクに侵攻したことから始まった。2003年の3月のことである。その裏には、9.11以降のアメリカの不安と、石油問題や宗教問題があったと言われているが、国家の威信を守るために直接戦地で戦ったのは、大半が貧困家庭出身の若い志願兵だった。第16歩兵連隊第二大隊の兵士の平均年齢は20歳だった。
 そして戦争が終わり、兵士は英雄となって帰ってきたように見えた。ところが、目に見える身体的な損傷はなくても、内部が崩壊した兵士たちが大勢いることがわかった。アフガニスタンとイラクに派兵された兵士はおよそ200万人。そのうち50万人が、PTSD(心的外傷後ストレス障害)とTBI(外傷性脳損傷)に苦しんでいるという事実が明らかになった。そして残された問題は、精神的な外傷を負った兵士たちをどのように治していくのか、果たして治せるのか、というものだった。
(略)
 本書に主に登場するのは、(略)5人の兵士とその家族である。そのうちの一人はすでに戦死している。生き残った者たちは重い精神的ストレスを負っている。妻たちは、「戦争に行く前はいい人だったのに、帰還後は別人になっていた」と語る。戦争で何があったのか、どうしてそうなったのか。
 彼らは爆弾の破裂による後遺症と、敵兵を殺したことによる精神的打撃によって自尊心を失い、悪夢を見、怒りを抑えきれず、眠れず、薬物やアルコールに依存し、鬱病を発症し、自傷行為に走り、ついには自殺を考えるようになる。そうなったのは自分のせいだ、と彼らは思っている。自分が弱くて脆いからだと思っている。まわりからいくら、「あなたのせいじゃない。戦争のせいなのだ」と言われても、彼らの自責の念と戦争の記憶は薄れることはない。
(略)
 一方、ワシントンの「ガードナー・ルーム」では、自殺防止会議が毎月開かれ、自殺した兵士の数とその詳細について検討され、そこから何らかの教訓を得ようとしている。しかし、どれほど検討を重ねても自殺者が減る気配はない。陸軍が巨費を投じて作った医療施設は収容者でいっぱいで、そこに入れない者が大勢いるのである。そして収容者の多くは過剰な投薬を受けている。
 毎年240人以上の帰還兵が自殺を遂げているという事実は(自殺を企てた者はその10倍と言われている)、限りなく重い。なぜ、帰還兵は自殺し続けるのか。
(略)
 本書で書かれたような苦悩する兵士がいるのは、なにもアメリカに限ったことではない。日本においても、イラク支援のため、2003年から2009年までの5年間で、延べ約1万人の自衛隊員が派遣された。2014年4月16日に放送されたNHK「クローズアップ現代」の「イラク派遣 10年の真実」では、イラクから帰還後に28人の自衛隊員が自殺したことを報じた。自殺に至らないまでも、PTSDによる睡眠障害、ストレス障害に苦しむ隊員は全体の1割から3割にのぼるとされる。非戦闘地帯にいて、戦闘に直接関わらなかった隊員にすらこのような影響が出ているのである。


ともかく、派兵された兵士たちは、内部から“壊れてしまう”ようだ。壊れた人の家庭は崩壊し、家族も道連れにされてしまう。妻たち、子どもたちも巻き添えにして、働くことができない大量の人々を抱えたあの国は、やはり“沈みゆく大国”なのだと思う。この国が、そんな国の後追いをせずにすみますように。

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