『亡国の安保政策——安倍政権と「積極的平和主義」の罠』
元防衛官僚、第一次安倍政権当時は内閣官房で安保政策を担当していた柳澤協二氏による、安倍政権による危険すぎる安保政策について検証した一冊。
「積極的平和主義」と耳触りのいい言葉を前面に出してはいるが、歴史認識を巡っては近隣諸国との軋轢が増し、靖国参拝を強行してアメリカからも「失望」されたこのひとは、いったい何がしたいのか?解釈改憲で憲法9条を捻じ曲げて、どうするつもりなのか?抽象的で、非論理的な説明しかできないこの政権が目指すものはいったい何なのか? と言った疑問に専門的見地からわかりやすく答えている。
『亡国の安保政策——安倍政権と「積極的平和主義」の罠』
柳澤協二 著
岩波書店 刊
2014年4月 初版発行
★この書評がわかりやすい…ココ!
★参考サイト「集団的自衛権の今後を占う」
安倍政権の進める亡国の安保政策!(1) …ココ!
NPO法人国際治政学研究所理事長 柳澤 協二 氏
集団的自衛権行使容認に関して、その必要性を「具体例」をあげて「説明」しているが、どれひとつ必要性を満たしていないことを明確に論破している。これに関しては、『安倍首相から「日本」を取り戻せ!!』と併せて読むと面白い。
極にゃみ的抜粋。
早稲田大学国際学術院アジア太平洋研究科教授、現代中国研究所所長 天児慧氏との対談 「混迷を深める日中関係をどうみるか」 から
天児 (略)
集団的自衛権も、確かに今の国会で安倍さんが言っていることだけを聞いていれば、なんとなく必要かと思うかもしれませんが、集団的自衛権そのものが持っている要素には、「日本は戦争をしない」という原点から外れていく側面が、客観的にあるわけです。
我々としては、戦争をしない、世界平和をつくり上げていく、そこで国際貢献をするというのは、非常に重要な意味を持っています。そういう発想をもう一度取り戻していかなくてはなりません。それが日本のこれからの国家像でもあるし、立ち位置を見直していくことでもあると思うのです。
柳澤 私も全くそこは同感です。私は自衛隊の海外派遣を担当していただけに、すごく同感するのです。自衛隊は、イラクでも現地の人に一発も弾を撃たず、一人も殺さなかった。自衛隊というのはそういう存在なのだということが、一つの国際的ブランドとして確立しつつあると思います。
企業が進出したって、現地のワーカーを育て経営のノウハウまで与えるのは、中国のやり方とは違います。単なる富の収奪ではなく、日本ブランドのようなものがある。そういうものに、安倍さんは、全く逆方向で非常に粗雑な形で重大な問題提起をしていると見ることもできます。
早稲田大学国際学術院アジア太平洋研究科教授 植木(川勝)千可子氏との対談
「米中パワーバランスの変化と、日本の立ち位置」 から
集団的自衛権をどう考えるか
柳澤 安倍さんは「日米安保を完全な双務性にしたい」と言いますが、私はアメリカと日本の軍事的ポジションや力の差を考えると、軍事的に完全に双務性ということはあり得ないと考えています。
植木 しかも、何のために双務性にしたいかですよね。それによって安全がより確保でき、平和な世界が構築できるというならば、それもいいと思いますが、ただ双務的になって「負い目がないようにやりたい」というのであれば、意味がないことだと私は思います。
そもそも、どういう世界を築きたいと思っていて、その世界の構築のために一体、日本は何ができ、ほかの国と一緒にどうやってそこに到達するかが一番大事なはずです。
柳澤 集団的自衛権の行使容認に向けて様々な具体例をあげ、アメリカの船を守るとか、飛んでくるミサイルを打ち落とさないといけないと言うけれど、あまり今日の情勢に合わせた具体的なニーズとしてイメージできません。やはり双務性を達成したいということ自体が自己目的になっているから、今の国際情勢の中で多少変でも別に構わないというのが今の流れだと思います。
植木 ただ、これから先の日本の力の推移や立場を考えていくと、日米同盟をどう維持していくのかは考えなければなりません。今までは基地を提供してアメリカに守ってもらう構図でしたが、中国の力が強くなるにしたがって、在日米軍基地はより危険にさらされ、脆弱性が増すと思うのです。
そうすると基地の戦略的な価値は下がります。
(略)
柳澤 主要国としての「パワー」というより、主要国としての「知恵」を持たなければいけないだろうと私は思います。自分自身を大国として周りをコントロールすべき存在として規定するのか、それとも特に軍事的にはミドルパワーでいいと納得し、自分のできる範囲でやっていくのか。
植木 力ではなく、ルールによって行動が規定される世界になっていかないと、すごく危ういと思うのです。イラク戦争の時にはアメリカに対して世界は何もできませんでした。アメリカを制御するには、アメリカ国内の自浄能力に委ねるしかありませんでした。次の超大国に自浄能力があるとは限りません。ルールは各国が参加してつくり、罰則規定も設けないといけないと思っています。
(略)
日本が世界の安定のために、もっと積極的になることには賛成です。アメリカの影響力が低下することが予想される今、日本が、現存の国際システムの安定を支えていくことは必要です。しかし、その時に大事なのは、周辺国との良好な関係の中で、一歩を踏み出すことです。そうでないと、地域が不安定になり、日本の安全がかえって損なわれ、本末転倒になりかねません。軍事、外交、経済、技術移転、文化交流など様々な手段を用いて、安全保障戦略を遂行することが大切です。 (2014年2月28日)
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