『はじめての自然農で野菜づくり』
「赤目自然農塾
」を主催されている川口由一さんの自然農の解説書。
不耕起、無農薬、無施肥の自然農法についてよくわかる一冊。タイトル通り、初心者向けにやさしく書かれている。
畑を借りたときに一度読んで、この理念でやっていこう、と思って、一年経って改めて読み直してみたもの。
耕さないことは自然農の基本で、それは自然界の姿と同じ。耕すと一時的に土がふかふかにはなるが、すぐにかちかちになってしまう。耕さず、草も虫も共存した状態で、「必要なら少し手を貸し、余計なことはしない」というもの。
『はじめての自然農で野菜づくり』
川口由一 監修
学研パブリッシング 発行
2013年3月 初版発行
例によって少し抜粋
「監修にあたって」から
耕さず、肥料、農薬を用いず、草や虫を敵にしない自然農の菜園づくり、野菜づくりは本当に楽しい。
明るい暖かな太陽の陽射しにぬくもり、渡り来る風に身体を清め、美味しい空気を全身に食みつつの作業は心身の健康そのものです。四季折々に新しいいのちの種子を降ろしてゆく作業、折々に手助けし、実りを手にしてゆく作業は生きた芸術であろ、百千のいのち達に働きかけての表現、創造はなんとも楽しく喜び深く、小さないのちの種子を大地に降ろせば、可愛い芽を出し、幼き姿は我が子の如く愛おしい…。
新鮮で初々しいいのちが宇宙自然の子、神の子そのものの神妙なる姿で日々に成長をみせ、やがてたくましく育った枝葉に美しい花を咲かせ、見るみるうちにたくさんの玉の実が姿を現し、赤に黄に色づき朝露おいて朝陽に輝かせるいのちの姿は美そのもの、真そのもの、豊穣そのものです。
自然農3原則
その一 「耕さない」
自然界の大地では、たくさんの動植物や微生物たちが暮らし、次世代へ生命のバトンを渡すことを繰り返している。そこには必ず枯れ葉や朽木、小動物の排泄物、生命を終えた動植物の亡骸の層があり、土がむき出しになっていることはない。自然農では、そのような自然界の亡骸が糧となり、作物たちは健康に育つ。
耕されてむき出しにされた土は、太陽にさらされて半砂漠化し、土壌流出を起こし、時が経過するにつれてカチカチに締まり、また耕さなければならないという悪循環に陥ってしまう。耕さない畑は、「豊穣の世界」。耕した畑は「不毛の地」。それほどの差があると川口さんは語る。
それまで耕し、肥料を使っていた畑で自然農を始めると、最初の1~2年は土が締まって固くなってくる。しかし、そのまま耕さず、自然に任せておけば、必ず生命たちの力で土は柔らかくなる。土がカチカチでも、その場だけ土をほぐし、米ぬか等で少しの補いをして工夫すれば、1年目から実りを手にすることができる。
その二 「持ち込まない」
耕さず、自然に任せておけば、土はやがて豊かになる。その時期、その場に相応しい動植物や微生物を、自然界がバランスよく配してくれる。けっしてミミズがたくさんいるから豊かというわけではない。大切なのはバランス。多くの種類の生命が調和し、活動しやすい舞台を、人間の手でつくることはできない。
人間が何かをそこに持ち込むと、バランスは崩れる。化成肥料や有機肥料、農薬は持ち込まないのはもちろん、川口さんは酵素や微生物資材なども、一切使わない。ただし、田畑でできた野菜のくずや家庭ごみは畑にまく。家庭ごみには魚の骨なども入るが、それは許容範囲。また、草や作物の姿が弱々しく、地力が弱そうなところには、周囲のあぜ草、米ぬかや小麦のふすま、菜種の油かすをまく。いずれも原則は、その田畑で養われる家族が消費する分だけ。土づくりはできるだけ人間が手を出さず、養分過多にならないようにする。
大切なのは、絶対に土中に埋めないこと。野菜くずなら少し刻んで、米ぬかは油かすや小麦のふすまなどと混ぜて、作物の近くにまく。生ごみが余ったら畑の一角に穴を掘って入れ、雨が入らないよう板をのせるなど工夫し、自然に発酵してからまくとよい。
その三 「草や虫を敵にしない」
さまざまな生物の営みがなくてはならない自然農。草も虫も敵ではなく、欠かすことのできない命の一員だ。草も虫もそこにない養分をつくってくれ、亡骸も次の生命の糧となって、足元を豊かにしてくれる。
たとえば、よく知られているのがマメ科植物の働き。その根には根粒という小さなコブがあり、そこに住んでいる根粒菌という微生物は、空気中のチッソを固定し、アミノ酸や亜硝酸といった養分を宿主である植物に供給している。また、イネ科植物の根は深くまで伸び、地中に酸素を届けてくれる。
とはいえ、わざわざそのような働きを期待し、マメ科やイネ科の草のタネを人間の手でまく必要はない。アルカリ性を好む草、酸性を好む草もあり、自然に任せているとその時期、その場所に相応しい草が生えて、やがて土をバランスよい状態で豊かにしてくれる。いろいろな草が生えることで、生物が活動しやすい環境はつくられる。
ただし、草や虫は「敵」ではないが、川口さんも必要なときにいは幼い作物が負けないように足元の草を抜き、作物が育ってくれば負けないように近くの草を刈り、虫を捕殺することもある。農薬で一掃しようとすると生態系を崩してしまうが、人の手による捕殺や株もとの除草程度なら虫や草が全滅することはなく、バランスが崩れることはない。
参考サイト
★川口由一さんの自然農
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