『高浜原発の再稼働差し止め仮処分』@神戸新聞・随想
2015年4月27日神戸新聞から、地震学者・石橋克彦氏による「随想」。
【参考】
3月26日「西日本大震災への備え」
3月11日「東日本大震災の教訓」
インタビュー1・17から 震災20年へ(6)地震学者 石橋克彦
以下に全文を引用する。
原子力規制委員会の新規制基準に合格し、再稼働を目指している関西電力高浜原発3、4号機について、福井地裁が再稼働を認めない仮処分を決定した。新規制基準は緩やかすぎて合理性を欠き、これに適合しても原発の耐震安全性は確保されないと断じた。
福島第1原発事故がなかったかのような政府の原発回帰の異常さを正すものだが、「偏向」だと非難する論調もある。しかしそれらは、決定文をよく読んでいないか曲解している。決定の考え方では飛行機も飛ばせないという声もあるが、原発事故の被害の甚大さを無視した感情論だ。
耐震設計の目安とする基準地震動の信頼性が低いとした判断に対し、科学無視だという批判もある。だが、日本地震学会の情報誌には、基準地震動は「科学的真理」などではなく、原発を造るための想定に過ぎないという意見も出されており、判断は妥当である。
新規制基準の合理性の否定に対して、規制委員会の田中俊一委員長は事実誤認があると批判し、安倍首相はそれを引いて再稼働を進めると強調した。しかし、新基準が多くの脆弱性を許し、多重防護の体をなしていないという指摘は正しい。実際、その中では耐震重要度分類の見直しなどが先送りされている。免震重要棟の設置が猶予されているのを不合理としたのも当然である。私は「世界で最も厳しい水準の規制基準」という安倍政権の常套句がまやかしなのだと考えている。
一方、九州電力川内原発1、2号機の再稼働差し止め仮処分申請は、鹿児島地裁で却下された。新基準も審査も合理的と判断された。だが決定文からは、かつての行政追従の司法と同様、原発を止めないという結論ありきの感が強い。しかも審査には、基準地震動をめぐり新基準の規定に反する基本的ミスがあるが、残念ながら争点とされず、基準地震動が不十分という禍根も残した。(いしばし・かつひこ=神戸大学名誉教授・地震学)
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コメント
エネルギー…
“原発再稼働を認めない”
“原発は動かし続けるという結論”
アインシュタイン博士は草葉の陰で…何を考えている?
地球の浄化ボタンがどっちに動くか…
人間の心の磁器がどう流れていくか?
正負の振り子の原理。
投稿: オバカッチョ | 2015年4月28日 (火) 15:08
にゃみさん、はじめまして。
と、言っても、
2度ほど六甲山でお見かけしたのですが、
声をかける勇気がなかった者です。
いつも楽しみにBLOGを拝見しています。
大飯原発運転差止請求事件判決要旨全文からの抜粋です。
次の世代へ、豊かな国を残していくことが、
今生きている我々の使命だと思います。
以下抜粋。
原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。
また、被告は、原子力発電所の稼動がCO2排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。
投稿: kama | 2015年4月28日 (火) 15:36
オバカッチョさん、
ホント、“正負の振り子”、
どっちに振れるかでとてつもなく未来が変わる…
どうして現在進行形の事故に学べないのでしょうか。
kamaさん、
どこかでお会いしているんですねー、
次回はぜひお声おかけくださいね。
判決要旨の転載ありがとうございます。
「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」、本当にそう思います。
大切な故郷を追われ、避難を余儀なくされている方々があれだけたくさんいらっしゃる中で、また同じような事故が起こりかねないのに再稼働とかありえません。
投稿: にゃみ。 | 2015年4月28日 (火) 22:47