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『自家採種入門 生命力の強いタネを育てる』

タネが危ない』『はじめての自然農で野菜づくり』などをJikasaisyu_2読んだり、「お米の勉強会」と出会って、自然農法とか、在来種というものに興味がわき、さらに自家採種をしてみたくなった一冊。
アスファルトの隙間で育って「ど根性ダイコン」などと話題になるものがあるように、野菜によっては、勝手にこぼれタネで発芽して育つものがある。
自給自足の農業が行われてきた時代は、自家採種は栽培の一部としてふつうに行われてきたが、いつしか“農”という自然に寄り添った営みですら商業主義に染められて、タネは買うもの、というのが当たり前になってしまった。
けれど、地方品種と呼ばれる在来種は、その地域の環境に適応するように何世代もかけて進化してきたもので、どこか遠くの圃場で採種された品種より本来強いはず。

コツのコツシリーズ『自家採種入門 生命力の強いタネを育てる』
中川原敏雄・石綿薫 著
農山漁村文化協会(農文協) 刊
2009年3月 初版発行

選抜を重ねたF1種の方が収量も多く立派な作物ができるかもしれないが、農薬や肥料に頼らない自然な農法であれば、その土地で採れた種の方が育てやすいようだ。

かなり専門的な部分もあって飛ばし読みもしてしまったけれど、紐解いてみてよかった。F1と在来種、固定種の違いもわかったし。
極にゃみ的覚書を少々…

★近代育種は自生の力を奪ってきた
自給自足の農業が行われてきた時代は、自家採種は栽培の一部としてふつうに行われてきた。肥料の入れすぎは作物を肥満体質にして、病害虫の発生を招き、生命力の強いタネが採れないことを経験的に知っていた。地方品種と呼ばれる在来種は、その地域の環境に適応するように何世代もかけて進化してきて、自生力が備わっている。

★自然生えの適性 よく発芽してくるもの◎~ほとんど発芽しないもの×
適性度◎
 …野性的特性を残しており、タネをこぼすと毎年生えてきて雑草化する
シソ、オカノリ、カラシナ、ナタネ、ニラ、ツルナ、ルッコラ、オカヒジキ

適性度○
 …自家採種するとこぼれタネから毎年発芽してくる。小肥で栽培でき、種取りが容易
ミニトマト、地ダイコン、在来カブ、ニンジン、ゴボウ、漬け菜類、ツルムラサキ、ケール、リーフレタス、花オクラ、フダンソウ、アズキ、ササゲ、アマランサス、トンブリ、アワ、キビ、ライ麦

適性度△
 …自然生えの頻度は高くないが、品種を選び、除草など少し管理をしてやれば比較的栽培が容易
カボチャ、キュウリ、カンピョウ、マクワウリ、スイカ、トマト、ナス、ピーマン、ネギ、ヒエ、コムギ、ダイズ、インゲン

適性度×
 …多肥性でやせ地では根張りが悪いものや、酸性を嫌うものなど、栽培の歴史が浅く、まだ日本の風土に馴染んでいない
キャベツ、ハクサイ、玉レタス、玉ネギ、カリフラワー、ブロッコリー、ホウレンソウ、セロリ、ソラマメ、エンドウ、スイートコーン

★在来種
ある地域に適応している品種。純系化の進んだバラツキの少ないものもあれば、雑駁で、さらに分類できるものもある。

★固定種
OP種(open pollinated variety)の日本語訳。
交配種(hybrid)に対する非交配種という意味で、本来は開放受粉品種、自然受粉品種とでも言うべきもの。

※有機栽培には、交配種より固定種の方が適するという情報は、固定種ならすべて有機栽培に適合するという意味なら正しくない。

★交配種
雑種強勢は、雑種第一世代(1st filial generation=F1)で最も強く表れることから、多くの野菜でF1世代を利用した交配種が育成されている。海外の加工用トマトではF2を利用するものもあるので、交配種すべてがF1ではない。

 雑種強勢は、草勢、耐病虫性、環境ストレス耐性、生長速度、糖度、収量など農業上有用な形質に同時に現れることから、交配種を開発する際には多数の組み合わせが検討され、最も能力の高い組み合わせが採用されている。
 交配種のどの個体も遺伝子構成は極めて近いことから、形質や生態が揃い、栽培管理しやすく、生産物の揃いも良い。
 しかし、次世代では各遺伝子はバラバラに伝わるため、交配種とも、その両親とも同じ遺伝子構成にはならない。さらに優れた形質のものが出現する可能性もあるが、F2世代を集団として見た場合に、各形質のバラツキが大きく、営利栽培には適さない。これが、交配種は自家採種ができないと言われる理由のひとつ。

★作物に自然に近い環境条件を体験させ、野草であったときの本能を刺激して、作物のやる気を引き出すことを狙いとした栽培方法が「無肥料・不耕起・草生・無整枝栽培」。

 圃場には外からの肥料・堆肥・有機物は持ち込まず(無肥料栽培)、コムギ・マメ類と野菜を輪作しながら両者を交互に作付ける(輪作・交互栽培)。
 畦間には牧草・雑草を生やして定期的に草を刈り取り(草生栽培)、作物と草生の境界に帯状に敷き草にしてミミズなどの土壌生物の住処にしながら土を肥やす(刈り敷き法)。
 圃場は作物区と草生区(敷き草帯も含む)が交互に配置され、作物区は畦を作らず、草を剥ぎ、そこに播種や定植し、除草は作物区のみ行う(不耕起栽培)。

★土壌管理のポイント
・作物区は、常に作物が生育しているように輪作
 野菜→コムギ→豆類の2年3毛作 で、野菜畦とマメ科畦を交互に作付ける。
・草生には、オーチャードグラス、アカクローバーなどのイネ科・マメ科の永年生牧草や雑草を生やし、草丈30センチ程度を目安に定期的に草刈りし、作物区との境界に敷き草する。
・作物の収穫残渣はその場に刈り倒して敷き草にする。

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