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『養老孟司の大言論II 嫌いなことから、人は学ぶ』

養老孟司の大言論I 希望とは自分が変わること 』が面白かったのでDaigenron2続いて読んでみた。
  …って、3か月ほど前のことだけど。カンヅメweekなので塩漬けネタ。

「われわれの思想としての事件」「考える軍隊」「信仰とはなにか」「ユダヤ問題」「意識の博物学」「博物学の視点」「違いから説き起こす」「お金や情報は「現実」か」「石油が維持する秩序」「傲慢になっていないか」「単純な人生」「人を見ること、生きること」の12章と、内田樹氏との特別対談からなる。前作同様、いろいろと示唆に富んだ面白い一冊だった。
けっこう“わからない”ところがたくさんあったのだけど、巻末の対談を読んでなるほど…と。

養老孟司の大言論II 嫌いなことから、人は学ぶ
養老孟司 著
新潮社  刊(新潮文庫 )
2014年3月 初版発行

例によってちょこっとだけ抜粋。

「違いから説き起こす」 から
P155
 石油がなくなった後の世界を考えると、私は逆に、人々がいまより幸福になるという確信がある。地産池消で適当な密度で人々は全国に散らばる。エネルギーがもったいないから、むやみに車で動かない。たかだか70、80キロの人体を運搬するのに、トンという重さの重機械を動かしている現状は、正気の沙汰ではない。冷房をやめれば、都市を涼しくなるように設計するしかない。マフィアに殺された人間じゃあるまいし、コンクリート詰めはいい加減にしてくれ。機械のかわりに身体を動かせば、糖尿も痛風も減る。それをイヤだと思っているのは、やったことがないからに過ぎない。

「石油が維持する秩序」 から
P191
 数年前、飛行機で珍しくアメリカ上空を飛んだことがある。いちばん驚いたのは、上空からコンテナが多数見えることだった。そのコンテナ一つを、大型トラック一台が運ぶ。原油価格がアメリカ経済を直撃する理由が、目に見えたような気がした。さらに地上に丸い畑がたくさん見える。はじめはあの緑の丸はなにか、と疑問を感じた。ところが緑とは限らない。ときどき枯葉色になっている。そこで畑じゃないかと気づいた。スプリンクラーだな、とやっと理解できたのである。それなら畑は丸くならざるをえない。中心から水を撒いたら、丸くなるではないか。だから畑も丸い。それにはただし、水とエネルギーが必要である。その水はおおかた地下水で、スプリンクラーを回すエネルギーは、石油か石炭である。この農業は長くないな、と私は思った。
ただし百年単位での話である。その農業を真似て、わが国の農業を工業化しようという人がいる。信じられない。

巻末
「わからない」から始めよう ―内田樹氏との特別対談 から
P284
内田 編集の方にわからない点があったら指摘してくださいと言われたのですが、確かに「わからない」というところは多々ありました。でも、「わからない」というのは、「わからないので今すぐ教えてください」という話ではなく、「この辺がわからないけど、気長に片付けよう。まだ自分には修業が足りないので」という「わからなさ」だからいいんです。「わからないから教えてください」というのは横着なんですよ。読んでわからないのは、わかるだけのレベルに達していないということなんだから、「ああ、わからない、わからない」と思いながら、「デスクトップ」に置いておけばいいんです。デスクトップに置いてあると、いつも気になっていて、何年かたって開くとささっと読めた、ということになる。だから、たくさんわからないところがある本はよい本だとぼくは思っているんです。そこから始めればいいんだから。

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