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『和歌山カレー事件 再審請求のいま そしてこれから』

昨日、梅雨明けして暑い大阪で行われた表題の集会に参加してきた。Dsc01906
和歌山カレー事件については、もちろん知ってはいたけれど、“過去の事件”という認識しかなかった。
数日前に友人がこの集いのことを知らせてくれたときも、さほど興味が持てなかった。福井県からわざわざ来ようとするモチベーションは何なんだろう?とは思ったけど。
当日、本人が多忙で来ることが難しい状況となって、こちらはちょうど時間を取ることができたので、彼女の“代わりに”聴いてこようと思ったのだけど…行ってよかった。

世の中には、表面に出てこないことがたくさんある。この件もそう。法治国家国家の名の下で、とんでもない人権侵害が行われていることに衝撃。
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袴田巖さんの件もそうだが、冤罪によって基本的人権を奪われ、日々死の恐怖に直面しながら、不自由な生活を強いられている人がいるこの国の現実。

原発の問題も、放射能汚染の問題も同じだけれど、「知らずにいること」は、意図的ではないにしろ「知られると都合が悪い存在」に加担するのと同じことではないかと思う。

17年前の報道で記憶している林眞須美さんという人は、はっきり言って好感を持てるタイプではなかった。
実際がどうなのかは知らないけれど、彼女を “メディアでしか知らない私” がそう思うのは、明らかに“メディアによる刷り込み”だ。「平成の毒婦」というレッテルは、今も強力に彼女に貼り付いている。

問題の事件が起きたのは、17年前、1998年7月25日。
マスコミによる犯人捜しがヒートアップし、直接証拠がないまま “いかにも怪しげな” 林眞須美さんが2ヵ月後に別件逮捕された。同年12月にカレー事件で起訴、2002年に一審の和歌山地裁で死刑判決、二審の大阪高裁は控訴棄却、最高裁でも上告棄却で死刑が確定。

ところが、この間に林眞須美さんを犯人と考えるには不合理な事実が次々と判明してきた。
物証とされた薬物の分析に問題が多く、専門家による再鑑定によって、カレーに混入された紙コップのヒ素と林家にあったヒ素は一致しないこと、林眞須美さんの毛髪から検出されたヒ素についても鑑定方法に問題があったことが明らかになっている。

会場では、まず毎日放送「極限の絵画~表現する死刑囚たち」のVTRが流され、林眞須美さんを支援する会代表の鈴木邦男氏の挨拶。
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「好き嫌い、いい人か悪い人かは関係ない。私自身にしても逮捕歴があるし、決していい人ではないが、問題はそういうことではない。今日この会場にも来ている刑事さんから、“1週間あれば殺人事件の犯人として自供させられる”という話を聞いたこともある。林眞須美さんは本人が言う通り“カネには汚い部分もある”人だが、だからこそ一銭にもならない殺人事件など犯さないのではないか」と述べられた。

続いて再審請求弁護団の大堀弁護士から「再審請求の現状と課題」ということで、事件の概要、裁判の経緯と現状についての報告。
「直接証拠」がひとつもないまま、間接事実のみで起訴されたが、有罪の根拠となった中井鑑定には問題があること、鑑定に使われた「スプリング8」はそもそもそういう用途に適していないこと、実験方法の信用性が担保されていないこと、目撃証言についても信用性がないこと、毛髪鑑定も信頼できなこと… などが説明された。
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そして、分析化学の専門家である京都大学大学院工学研究科・河合潤教授から、論拠となった中井鑑定の問題点についての解説がなされた。

【参考サイト】
★和歌山カレーヒ素事件鑑定の問題点 
 京都大学大学院工学研究科・河合潤教授
  (海洋科学研究所『海洋化学研究』27巻(2014年)月例卓話287)
  …ココ!(PDF)

マル激トーク・オン・ディマンド 第732回 2015年4月18日
★「和歌山カレー事件に見る、科学鑑定への誤解が冤罪を生む構図」
  …ココ!

★和歌山カレー事件のヒ素鑑定――再分析した京大教授が否定
 「和歌山カレーヒ素事件鑑定の問題点」…ココ!

★和歌山カレー事件 「決め手」のヒ素鑑定に真逆の指摘
  …ココ!  週刊朝日 2013年5月24日号

★和歌山・毒カレー事件、ずさんなヒ素鑑定発覚で逆転無罪に?
  …ココ! 週プレNEWS 2013年03月22日



ところで、林眞須美さんは1961年7月22日生まれ。37歳のときこの事件が起き、以来国家権力によって17年間拘束されたまま、明日54歳の誕生日を迎える。
3畳ほどの狭い独房で、日々死刑執行の恐怖と戦いながら生きている彼女と私は同い年である。

これまであまり興味を持っていなかった死刑制度についても今後は考えていきたい。


★オマケ
京都大学大学院工学研究科・河合潤教授が面白い方だった。
なぜか研究室のHPにアクセスできないのだが。
「JST News ようこそ私の研究室へ23」…ココ!

質問タイムに、「国立大学の教授でありながら、最高裁判決という国が決めたことに反論すると立場が悪くなりませんか」というような意味のことを聞いた方がおられたのだけど、研究者としての自信から?「大丈夫だと思います」との頼もしいお答え。なんだかステキな方だった。

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コメント

>法治国家の名の下で…

個人的に、極小の裁判経験したけど
分かったことは
裁判所も法律も弱い者の味方ではない!ってこと。
法律の事、よく知ってるものが勝。

きちんと“戸締り”して、自分のことは自分でしっかり守らないと…気がついたら身ぐるみはがされる。
自分で“カギを閉めておかなかった”あなたが悪い…
が法の常識だった。

こんな小さながっかり…いっぱいあるのことよ。

法…ってなんなんだろう。


投稿: オバカッチョ | 2015年7月22日 (水) 16:52

>法…ってなんなんだろう。

「法律」もそうですが、「国家」も…

基本的に、人は一人では生きていけない存在だと思うのですよ。

生まれたばかりの赤ん坊は、庇護者がいないと生きられないし、何かの事情で傷害を負ったり病気になったりしたら働けないし、高齢になってもそう。

それを、“お互い様”のセーフティーネットでどうにか克服しようというのが「国家」の原点のはず。

誰だって他者の助けがなくては生きられない状態になる可能性もあるのだから。

そんなことに想像力が働かない人たちが政治をやっててはダメですよねぇ。

投稿: にゃみ。 | 2015年7月22日 (水) 23:11

私も”マスコミの刷り込み”によってたしかに林眞須美さんには悪印象しかありませんでした。知りもしないのに。。。
でも裁くってそうゆうことじゃないんですよね。
個人的にはつい、イイ人(そう)とかアヤシイ(そうな)人とかで判断してしまいがちですが。
ただ、司法のプロが私たちと同じ判断じゃ困ります。
正しく裁かれてこその裁判でないと根幹が揺らぎます。
と、私もすっかり忘れていた今回の事件で考えさせられました。

投稿: monaco | 2015年7月27日 (月) 10:17

ヨノナカには、ホントに“ちゃんと見えてない”ことがたくさん。

都合の悪いことを見せようとしない権力サイド、
面倒なことは見ようとしない民衆。

ちゃんと知ること、理解すること、判断すること、
大事な事がホントにたくさんある。
学ばないと…

そして、学びのきっかけをもたらしてくれる良き友や仲間たちに感謝。

投稿: にゃみ。 | 2015年7月27日 (月) 11:06

>都合の悪いことを見せようとしない…
>面倒なことは見ようとしない

っていうか、これは、私たちみんな…
人間が持っている性悪な部分ですよね。

物欲、性欲、名誉欲…ある程度は必要だけど
「執着」すると、とんでもないことに。
犯罪も起こるし、戦争にも。

つまり、国家は個人の集合体ですね。

>良き友や仲間たちに感謝…
う~~ん、確かに…そうだけど…
断言できるにゃみさまは果報者だと思います。

投稿: オバカッチョ | 2015年8月 4日 (火) 14:16

誰しも、性悪だったり利己的だったりするのは当然だけど、それを律して少しでもみんながよくいられるように…と言うのが道徳だったり宗教だったりするはずなんですけど、そのへんが機能しなくなってるんでしょうね。

周囲によき友や仲間たち、そして導いてくれる存在がいてこそ、自分が自分でいられるのだと、感謝しています。

投稿: にゃみ。 | 2015年8月 4日 (火) 22:15

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